—01— プロローグ
「ねえねえ、母様―!私もウィルみたいに魔法を使いたいー!そしたら私ももっと強くなって悪い人達から皆を守れるのにー!」
少女は駄々をこねていた。こうしたことはよくあるらしく、少女の母親も慣れたように宥めていた。
「無理を言うんじゃありません。魔法なんて誰でも使えるわけではないんですよ?ウィルは星神様の加護を受けた特別な存在なのですから。」
「えー、ウィルばっかりずるいー!私も使いたいー!」
少女の不満はなかなか収まらない。
「アヤメは守護者の闘気が使えるんだからいいじゃないか。俺なんてただの気さえも全く使えないのに」
「うー……でも母様やウィルに頼ってばっかりは嫌なのー!それに母様やウィルに何かあったら私……」
少女は下を向き、手に持っていた刀をぎゅっと握り締めた。少年は俯く少女の傍へ行き、目線が合うように屈むとそっと少女の頭を撫でた。
「大丈夫だよ、みんなも、アヤメも何があっても絶対に俺が守るから」
少年の言葉に少女は顔を上げ、本当に?と問いかけた。少年は微笑み頷く。
「えへへ、約束だよ!」
少女は立ち上がると、嬉しそうに、そして照れくさそうに後ろで手を組んで微笑んだ。