いじめと片想い 裕香
実優は、私、裕香の友達。だと思う。
けれど、彼女が自分磨きのために消費する時間は一日のうちに、一時間。
実優達読モからしてみれば、当然のことなんだという。下手すれば、二時間もかけるらしい。
もちろん、実優が読モじゃなくても、消費する時間は変わんないと思うけど。
私も、太ってきた自分の体を見直すべく、実優を見習うことにした。
まず、夜、お風呂に入る(当たり前)。そしてお風呂から出たら、まず保湿クリームを塗る。ニキビまで出てきたらたまったもんじゃないもん。
ヘアオイルも利用するんだけどね。私の髪の毛は、乾かすとぼわってなっちゃう髪質なんだもん。毛先に付けるだけである程度はおさまるんだって。後はストレッチして寝るだけ(そのストレッチも怠ったら駄目)。
朝起きるとくせっ毛の髪質である私の髪の毛についている寝癖はドライヤーとくしで必死に押さえつける。
保湿クリームを塗って、玄米ご飯を食べて日焼け止めを塗って学校へゴー!
「おっはよ、想太君!」
通学路で私の好きな人、想太君を見付ける。彼は最近、自分の好きな人が引っ越してしまったから、遠距離恋愛になっているみたい。
学校一の美少年と名高い男の子で、先輩達からも注目されている。遥先輩も、モテいるらしいけど、両想いの人はいない。
「あれ、何かお前、白いな」
いち早く私の変化に気付いたみたい。
「え、何で分かったの? もしかして、私のことよく見てる?」
目をパチパチッとやると、想太君は溜息をついて、私に向かって手鏡を差し出した。青色のコンパクトなサイズだ。
「ほら、これ見て。…誰だって気付くよ」
見ると、そこには昔の女の人みたいに顔が白い私の顔が!
「い、いやぁぁあぁぁ!!」
「あっはっは、バッカみてーっ! 絶対男子に何か言われんぞ。誰に何吹き込まれたんだよ! ふふっ、めっちゃ笑えるー!」
お腹を押さえて笑い出す想太君。私の怒りはアップしてくる。
「あー、ひどい、笑わないでよ! 女子の失態笑うとか最低! 加奈さんに嫌われるよ!」
すると、想太君は、笑いを止めて、俯いた。
「あ、あれ…」
私は、マズイこと言っちゃったかな。と思って、想太君の顔を見た。
見ると、目が真っ赤だった。
「え、想太君…」
「加奈に、嫌われちゃう…? そんなの嫌だよ」
要するに、私はひどいことを言ってしまったのだろう。
加奈さんに嫌われるということが、どれほど想太君にとって苦しいことなのかが、容易に分かる。
「…じゃ、先行くね…」
想太君は、顔を上げて、上を向いた。
そして、そのまま歩き出す。
涙が、こぼれないように…?
「ご、ごめん…」
私の謝罪の声が届かなかったのだろうか、想太君は私を振り返りもせずに、歩き出した。
◆◇
学校に着くと、皆がざわざわとしていた。
先生のいない教室は、いわば自由行動の聖地であった。
「おはよう…」
私は奈波に挨拶した。
「…」
奈波は一瞬私の方を見て、すぐに目を逸らした。
「え…?」
清々しいくらいの無視、だと思う。
「ちょっと、実優…」
女子が、実優を囲んで、笑っている。
そして、こちらに気付くと、笑った顔の口角を更に上げて、言った。
「…あ、デブの裕香じゃん」
「…デ、デブ…?」
開幕早々、その言葉はないでしょ…。
「デブって、何で…」
「はぁ? デブにデブって言って何が悪いの。本当のことを言ったまででしょう」
実優は「常識でしょ」と笑って、皆が、それに合わせて笑う。
「何で…? 友達でしょ、私達」
「はぁぁ? 何わけ分かんないこと言ってんの? 私あんたのこと友達だと思ったことないよ? ただのデブって思ったけど? チョーウケる! 今度私のスマホでいい病院検索して教えたるよ! アンタ私と友達だって思ってた、相当の馬鹿だもんね!」
げらげらと皆が笑う。
莉以君や健一君、想太君は、何も笑わなかった。
けれど、奈波は笑っていた。
実優が黒板消しを二つ持ってきて、私の頭上で、パンッと叩いた。
粉が降りかかる。
シャンプーを使ってセットした髪の毛が、チョークの粉で汚れていく。
流石にこれは駄目だと思ったのか、莉以君、健一君、想太君が声を上げた。
「それはやりすぎだよ!」
「皆、やめなよ!」
「裕香が可哀想だろ!」
三人の一声で、教室は静寂に包まれた。
「何英雄ぶってんのよ! バッカみたい!」
だけど、実優が、いち早く反応して、反論した。
「あんた達、私に逆らうと、ひどい目に遭うわよ!」
その言葉で、男子はグッと黙り込んだ。
「裕香のことなんか、元々誰も好きじゃなかったよ?」
奈波の、落ち着いた言葉。
その言葉は、どれくらい本当のことなんだろう。
「皆言ってたよ? デブスで可愛くもないし、家も散らかってて女子力なんて微塵も感じないし、そんな生きてて実に楽しくないだろう人間が、クラスのリーダーなんて絶対おかしいって」
奈波は、微笑んだ。
「もちろん、私なんか、あんたなんか死んでも全然変わらないって思ってるもんね」
言葉と表情が、矛盾していると感じた。
胸が張り裂けそうなくらい、嫌な言葉だった。
死んでも全然変わらない。
奈波にとっては、いてもいなくても、変わらない存在。
一年の頃からの一番の親友に裏切られたショックが、予想以上に大きかった。
「だから私達、あんたを無視することにしたんだ」
私は、絶望で、言葉も出なかった。
今までいた座には、もうすっかり、実優と奈波が君臨していた。
まるで最初からそこにいたかのように。
そこに、裕香という人が存在しなかったように…。
「もう一度言うと、私達全員、あんたのことが嫌いだったの。…好きなんて思ってる人、多分誰一人いないんじゃないかな~」
奈波は、高らかに笑いながら、席について、女子と話し始めた。
しばらくして、担任の本井夏輝先生が入ってきた。
勘の鈍く、大学卒業したてのゆとり世代教師、童顔と、純粋そうな性格から、女子生徒には「可愛い」と評判だったが、学校からはそんなにいい評価がもらえない先生だ。
だけど、生徒の気持ちを考えるときはいつだって真剣な先生なので、私も、ちょっとだけ好感を抱いている。
「はい、授業を始めるよ~」
ぼんやりとした顔に、実優が「いいよ、なっ君、可愛い!」とおだてた。
「実優さんは本当に可愛くて、お世辞も上手いね。モデルだけじゃなくて、女優いけるよ、君なら」
実優は、上品に笑った。
「先生だってお世辞上手いじゃないですか。私なんて、モデルですら手一杯なのに、女優なんてしたら倒れちゃいますよ~。責任、取れるんですか~?」
すると先生は、「取れないよ~」と手をブンブン横に振った。
◇◆
「あれは、私に気があるんじゃない?」
女子トイレで実優は急にそんなことを言い出した。
手を洗っていた私は、実優の声に足を速めようとした。
でも、その話、気になる…!
誰が、実優に気があるの?
「なっ君、絶対私のこと好きだって! 絶対!」
がくっ。
もろにずっこけそうになって、慌てて踏みとどまる。
そんなのあるわけないじゃん。まさかあの本井先生が。
「世の中に絶対はないし、もし実優ちゃんのことが好きならロリコンだよ。…でも、可能性はあるからね」
大人しそうなショートボブの女の子が、口をはさむ。皆からゆっぴぃと呼ばれている。
「ゆっぴぃもそう思う? 私って大人っぽいから、まだ大学卒業したてのなっ君が、私に惹かれたのかしら…? その確率、高そうね」
そんなこと妄想してるから引かれた、の間違いでは…?
「実は私も、想太君の次に、なっ君のこと好きなのよね。可愛くて、素敵じゃない? 何か純粋そうなあの顔! 付き合ったら絶対に可愛いよ!」
えぇぇぇぇえっっっ!!
露骨に言葉には出さないけど、息を飲み込んだ。
だって、あの本井先生が好きなんだよ? 可愛いなんていう女の子はいたけど、マジで好きって子は見たことがないよ!
まくし立てて、気付く。
あぁ、私、実優に無視されてから、実優に対して否定的な意見言ってばっかだ…。
「ね、あんたもそう思うでしょ、デブ!」
名前を呼ばれたときは、流石にびっくりした。
デブって、私のことだよね?
でも、そう言っちゃえば、デブって認めたと同じなのだ。
でも、返事しないと。
「へ? 何が…」
こういうときだけは同意求めるために人に話しかけるのか、と思いながら、尋ねた。
「何がじゃないわよ。本井夏輝…。なっ君は私のこと好きかって思う? って聞いたの」
この子は、私以上にぶっ飛んだ自意識過剰なのかもしれない。
「え、うん。…多分。好きなんじゃないかな…?」
「本当? その言葉、信じてもいい?」
実優は、いじめている相手にも関わらず、肩をガシッと掴んだ。
もしかしたら、いじめたことなんて、当の当に忘れているのかもしれない。
「う、うん…」
「でも、無視はやめないよ」
前言撤回。まだ全然覚えている。
「…じゃあ」
私は、その場を立ち去った。
◇◆
それからは、地獄だった。
実優や奈波に、「気持ち悪い」「デブ菌が移る」と言われたり、話しかけられても無視される。
聞こえよがしに、「デブじゃん」と悪口を言う。そしてその度に、皆に笑われる。
いつしか、私は、食欲もなくなり、見違えるように痩せた。
病院に行こうなんて親に言われたけど、答えなかった。
いつしか、心を殺してしまったのだ。
デブと陰口を言われないなと思いきや、今度は「ブス」「いじめられないように痩せて更にモテようとするブサイク」と新たに言われ始めた。
そして実優は、「絶対なっ君は私のことが好き」と豪語していた。
そのことが辛くて、私は保健室の先生に、全てを話した。
保健室にいる氷室あかり先生は、皆の憧れの先生で、学校のアイドル並みの存在だった。
氷室先生は、慰めてくれたけれど、明日にはまた、無視が待っている…。
そんな嫌な日常が延々と繰り返される中。
見てしまった。
私は見てしまったのだった。
◆◇
忘れ物を取りに、学校の裏口から校舎に入り、来訪者ノートに名前を書いて、自分のクラスへと向かった。
夕焼け空は、まさに綺麗そのもの。
心の中は、真っ黒だけど。
皆が幸せに暮らしているのに、私だけが、いじめられている。
皆が羨ましいという嫉妬心、自分がいじめられている悔しさ、いつまでも好きな人を想う想太君を、想う恋しさ、不安の色。
それが全部入り混じって、真っ黒。
自分の空しさを埋めるように、黒板に女の子を描いた。自分で作った、セミロングの痩せた制服姿の女の子。自分の理想像でもあった。
丸い吹き出しを描いて、「負けないで♪ もう少し♪」と調子に乗って付け足した。
「なーんてね」
独り言だった。笑いながら、黒板消しでその絵を消す。さっきまでいたセミロングの女の子が、消えていく。
もしかしたら、奈波にとって、私は、こんなちっぽけな存在なのかな、と思った。
「…はぁ、もう帰るか」
忘れ物も回収し終わったし。
おやつのフルーツが待っている。
「ずっと前から好きでした!」
突然、そんな告白が聞こえた。
結構小さい声で、しかも男性、しかもどっかで聞いたことのある声だった。
もしかして、廊下!? と思い、廊下を盗み見る。
だけど、そこには誰もいない。
また、もしや、と思い、ベランダに出て、隣のクラスを覗く。
そこに、大人の男女二人がいた。
一人は、保健室担当であり、代理スクールカウンセラーの氷室あかり先生と、もう一人は…。
本井夏輝先生だ。
告白の声は、男性の声だった。
ってことは、告白したのは、本井先生の方!?
「新任だった僕に、この学校のこと教えてくれて、体育の授業中に怪我したときに、治してくれたり、いっつも夜遅くまで学校に残って、児童のことを考えている、氷室あかりさん、貴方が好きです!」
私は、くらっとなりそうな体を抑えて、その場から一歩も動かずに、一字一句聞き逃さないように、耳を傾ける。
「僕と、付き合ってください!」
本井先生の顔がはっきりと見える。
涙で、濡れている瞳が、まっすぐと氷室先生を見ているのだ。
手は小刻みに震えている。顔が真っ赤で、子供らしくて、可愛い。
一方の氷室先生は、目を見開いて、本井先生を見つめている。
男女問わず人気の先生に、片想いしている男子も少なくなかった。
十小の先生の中で一番の美人と名高い綺麗な顔立ち。ナチュラルメイクだけで綺麗さが引き立つのがまさに羨ましい。白くて細長い足は、白衣の下から見えるピンク色のスカートで隠されている。
肩にかかっている一つ結びのこげ茶の髪の毛は、まっすぐになっていて、髪質も綺麗だった。
誰もが羨むスタイルを全て吸い尽くしたかのような、完璧な外見を持つ先生だったけど、人気もある分、女子から向けられる嫉妬心もすごかった。
「えっと、あの、その…」
多分、告白は何度も経験してきているだろう。芸能人といっても通用しそうな氷室先生は、私なんかとは真逆の薔薇色の人生を謳歌してきてるのだろう。
「わ、私も、好きです…」
その言葉が、どれほど、本井先生を喜ばせただろう。
氷室先生は、下を向いて、話し始めた。
「本井先生が新任としてきたときに、あぁ、可愛いなって思ったんです。色々教えるときに、親身になって聞いてくれて、嬉しかったんです…。…でも、こんなに可愛い容姿して、こんな純粋でピュアな心の持ち主には、きっと彼女がいるんだろうな、って思ったんです。…だって、私、二十五なんだもんって…。本井先生が、二十二歳なのに…。って。
…だったら付き合えるはずないよねって、諦めてました。私よりもっと素敵な人がいるから、きっとそっちに行ってしまうって、ずっと思ってました…。
でも、両想いなんだって分かって、私、とっても嬉しかったんです…。自分を想ってくれる人がいるんだって…」
そして、本井先生と手を握った。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
そうして、二人は笑い合った。
今度こそ、もう隠し切れなかった。
頭を隣のクラスの窓にぶつけた。
やっば、と思って、慌てて自分のクラスに逃げ込む。
やがて、本井先生が窓から顔を出して、きょろきょろと辺りを見渡した。
私も、ひょこっと顔を出した。もう、見てないかな、と思って。
そしたら、本井先生と、目が…合ってしまったんだ。
◆◇
「昨日は、やばいもん聞いちゃったな」
翌日。
普段と何も変わらない穏やかな通学路。
だけど、私の心は穏やかじゃなかった。
昨日見た告白からのカップル誕生シーン。
そして、私が盗み聞きしてたこと。
今日には噂になってるだろう。
「今日は、先生からお知らせが二つあります」
朝の会で、本井先生が、椅子から立ち上がって、神妙な面持ちで、言った。
「まず一つ目。いじめは、絶対にやってはいけません」
実優は、ぎくりと肩を揺らした。
「氷室先生から聞きました。…このクラスにいじめをしている人がいると。被害者はとても苦しんでいます。どうか、もういじめなんてつまらないものはやめてください」
実優と奈波は、顔を見合わせて、頷いた。
「そして、これがもう一つです。
これは、何故僕が、氷室先生からこのことを聞き出せたのか、についての答えも出ます」
皆はごくり、と息を呑む。
「今日から、僕、本井夏輝は、保健室の担当である、氷室あかり先生と付き合うことになりました」
「えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっ!!」
皆は、ありったけの大声で叫んだ。
私は知っていたので叫ばなかったけど。
想太君も健一君も、奈波も、驚きながら叫んでいた。
ただ、文字通り、実優は真っ白に燃え尽きていた。
「ただ、多分裕香さんは、僕と氷室先生が付き合うこと、知ってたよね? 多分忘れ物を取りに来たんだろうけど…」
私は、「は、はい」と頷くしかなかった。
◆◇
「裕香!」
「ん?」
放課後、ランドセルを背負った私の前に、奈波が尋ねてきた。
でも今、裕香って…。
「ごめんね…」
突然のことだった。
「ごめんって、何…」
私は言った言葉を、飲み込ませた。
だって、ごめんってことは…。
「いつも、裕香をいじめてて…。…私、裕香のことがずっと好きで、親友だと思ってた…」
奈波は、アーモンド状の瞳に、涙を浮かばせた。
「だって、私、実優に、言われたんだよ…。…一緒にデブをいじめないと、お前もいじめるぞって言われて…。辛かったんだよ…」
でも、私だって、辛い思いをした。
苦しくて、悲しくて。
辛くて、一番の親友に裏切られて。
あったのは、絶望だけ。
「私だって、死のうって、いつも考えていたよ。でも、氷室先生が、心のより所で、…いつも支えてくれた…。私、奈波のこと、一年の頃から変わらない親友だと思っていたもん。
なのに、裏切られて、私、とっても辛かった。…奈波、何でって、ずっと思ったもん」
私は、感情を抑えきれずに、喋った。
「そりゃあ、私はブスだし、太っていたし、可愛くもないくせにリーダーぶって。それよりか、いつも私を支えてくれた美少女で可愛くてモテている奈波の方がリーダーに相応しいって、誰しもにそう思われてたよ。
だけど、奈波だけは、こんな生きてる意味すらも分からない私と、五年間も一緒にいてくれて、入学式のときに、「友達になろう」って一番最初に声かけてくれて、私、すっごい嬉しかった。
そんな奈波に裏切られたことが、一番悲しいんだ。
実優は、読モやってるし、芸能人だから、私なんかと格が違うんだって仲良かった時は、いつもそう思ってた。
だけど、転校してきてすぐ友達になれたのも嬉しかった。
今思えば、そんな友達のなり方したら、誰だって女子を率いているボスには逆らえないし、嫌な気持ちになって、相手を嫌うよねって、分かる。
だけどあの時は、有名人と親しくなろうって必死だった。…嫌われようと、何て言われようと、縁を切らない限り、友達でいられるって思ったんだ…。
実優が私を嫌っていることは、薄々感付いていたけど、奈波までも私を嫌ってるなんて思いもしなかった事態だからこそ、辛くて、苦しかった」
私は、いじめられている、痛くて苦しい心を思い出す。胸がキリキリして、すっごい悲しくて、悔しかった。
「でも、私、奈波に嫌われて、気付いたんだ…。
自分中心で世界は回るって、考えない方が良いって。
ずっと女王様状態でやり続けたら、やがてクラス内でその女王様状態の女子に反発を犯して、いじめが回ってくるって。
気付いたんだ。
だから、いずれ実優もいじめられるのかなって期待していた…。
本当は、そんなこと、期待しちゃいけないのに、…ひどいよね、私。
でも、実優は実家がお金持ちで、更に読者モデルもやってる。…いじめた人間が、未来を閉ざされる運命なんだよ。
実優をいじめたら、実優の両親にチクられて、学校を辞めさせられる。…そして、実優をいじめた肩書きを一生背負っていきながら、人生を生きていくんだなって、ちょっと想像した。
実優は、私をいじめても、私がどれだけ訴えても、両親に相談して、被害者ぶる。下手すりゃ裁判起こされて私が有罪になっちゃうよ、被害者なのに」
わざと、明るい声で言う。
奈波が犯した罪を、償えば良いって思った。
そんな私も、最低だ。
奈波は、口を開いた。
「私、裕香のこと、嫌いじゃないよ? …実優が、勝手にそんなこと言っただけ。…ずっと嫌いだったと言えって、言ったんだ…」
そうだったの?
言葉が、出ない。
「奈波、本当は、私のこと、嫌いじゃなかったの…?」
頷く奈波。
「本当は、いじめを止めたかった。…でも、無理だったんだよね。実優が怖かった…。
死んでも別にいいって言わなきゃ、実優に嫌われるって…」
でも、もう恐れない。…実優がショックを受けている間に、抜け出したんだ。
…私、もう、逃げない。裕香と、一緒に行く」
「な、奈波…」
私は、泣きながら、奈波に抱きついた。
久しぶりに親友に抱きついて、泣いた。




