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小学生の恋物語。  作者: けふまろ
花音の想い。
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卒業式。

 久我先輩を好きになって、一年が経過した。

 

 一年と言うものは早いものだった。ついこの前五年に進級したと思ったらもう一ヵ月後には六年だもの。

 私達五年生は、在校生代表として、卒業証書授与式、つまりは卒業式に出ることになった。

 この卒業式のために練習した合奏曲と合唱曲を、どうか六年生に、久我先輩に聞いてもらいたい。


 

 あの日、新年が始まってすぐに起きた静香と私と久我先輩の三角関係発覚事件から、二ヶ月過ぎた。もう少しで三ヶ月経過だ。

 だが私は、あの久我先輩のショックと言わんばかりの表情を見たって、ううん、ショックと言わんばかりの表情を見たからこそ、もっとこの恋を頑張ろうと、更に燃えていった。


 だけど、春。新しい出会いと、別れの季節。

 別れが迫ってきている。

 久我先輩と一年間会えないという事実が大きすぎて、ショックを受けていた。

 そのショックを引きずったまま、卒業式本番を迎えてしまったのだ。


 卒業証書が渡されている時間。辺りは先生の奏でるピアノの音に包まれ、周りの人は殆ど眠ろうとしていた。当然だ。卒業証書を授与する時間は超が何個もつくほど長い。

 おまけに「在校生の門出の言葉」の番が来た瞬間に立ち上がるため、練習中に貧血でぶっ倒れた人が何人もいた。

 そんな中、隣に座っていた彩ちゃんが、私の腕をツンツン、とつついてきた。

「ねぇ、花音ちゃん」

「ん? 何、彩ちゃん。今ちょっと静かにしなきゃ」

 私は周りを見渡す。皆静かに壇上を見つめているか、目を閉じている。私達みたいに喋ってる人は一人もいない。


「コクってきたら? 久我先輩に」


 突然のその言葉に、私は「は?」と小声で言った。

「何で今その事を」

「だって今日しか無いじゃん。学校内で会えるのは」

 彩ちゃんは微笑んで、「ま。頑張りな」と言いながら前に向き直った。

「~~~っ!」

 頬を赤くさせて慌てて壇上に向き直る私。

 

 そのとき。


「久我広樹」


 先輩の名前が、呼ばれた。

「はい」

 大きな声で返事した久我先輩は、壇上に上がって校長先生から卒業証書を渡される。

 そして、床へと降りていった。


 私は、久我先輩を目で追う。

 久我先輩は、受付係と思われるところで何かをし、私達の後ろを通って椅子に座った。


 

 卒業式も順調に進み、ついに私達在校生の門出の言葉の順番になった。

 担当の人達が門出の言葉を言い、合唱が始まった。

 歌うのは、ボカロの「オレンジ」という曲。

 すっごく涙腺崩壊してしまう曲で、練習中には、何人も泣く六年生がいた。

 そして、今も。


 曲も中盤まで来たところ、私は指揮者から目を外し、久我先輩の方を見た。

 

 泣いている…?


 久我先輩は、ひたすら泣いていた。

 目に涙をいっぱい浮かべさせて、歯を食いしばって、必死に涙をこらえている。


 そして、唇を動かした。



 そして、服の裾で涙を拭いた。

 隣にいる人が、久我先輩を支えている。


 何て言ったかは、深く考えないことにした。




 卒業式が終わり、いよいよ花のアーチで六年生を送る番になった。

 私達五年生は教材室から花のアーチを取り出し、校庭へ走っていった。

 

 校庭には、桜が舞っている。六年生の門出にぴったりの、雲一つ無い快晴だった。

 綺麗な花びらが、ひらひらと舞う。


 

 彩ちゃんと私で一つの花のアーチを持つことになり、昇降口近くで待機していると、六年生の集団が出てきた。

 昇降口近くだからか、六年生はあっという間に通過していく。

 私は必死で久我先輩を探していた。


「あ、久我先輩、来たよ!」

 彩ちゃんは久我先輩を指差した。

「絶対言うんだよ? 言わなくちゃ、駄目だよ!」

 彩ちゃんの発言に、私は頷いて、ドキドキする心臓を手で必死に抑えて、真っ直ぐ久我先輩を見つめた。

 


 久我先輩が、私を見て、「今までありがとう、また遊ぼう」と手を握ってくれた。

 その手が、暖かい。

 その瞬間、私は言った。



「ずっと前から、好きでした!」


 

 彩ちゃんは、よくやった、という表情でニッコリ笑った。

 周りにいた女子は、「キャーッ!」と黄色い声を上げ、男子は「誰が誰に告白した!?」と騒いでいた。


 そして、蒼井静香が見えた。

 まるで、何もかも分かっているような、大人っぽい表情だった。

 

 久我先輩は、目を見開いた。

 

 皆に注目されて、困っているようにも見える。


 

 そして、唇を動かした。




「ありがとう」




 私は、その言葉を聞けたのが嬉しくて、「はいっ!」と笑って、微笑んだ。





 私は、幸せすぎて、気付かなかったのだ。

 昇降口から、静香が顔を覗かせて。

「良かったね」と呟いた。

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