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小学生の恋物語。  作者: けふまろ
花音の想い。
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デパートで最悪な話?

「遥君と遊びに行ったの、楽しかった?」

 十二月二十五日。私は晩御飯を食べながら言うお母さんに頷いた。

「そぉ、クリスマスに行ったんだ。だから葉音とは遊べなかったの」

「えぇ、お姉ちゃんひどい」

 私は更に詳しい話をする。

「それで、行った場所は、良く私達が家族で遊びに行った所。楽しかったよ」

 お母さんは頷いて、笑って言った。

「そう、楽しかったわよね。遥君は貴方のこと好きってことが分かったわよ」

「もう、そんなんじゃないって」

 葉音は、私とお母さんのやり取りに、笑っていた。


   ◆◇


 私は新年が明けた一月四日に、弟の葉音とデパートへと遊びに行った。

 加奈さんと林檎を食べたり、遥君とデートしたことが去年になってしまうなんて、時の流れは非情だった(大げさ)。

 葉音が前から欲しがっていたストラップを買って、さぁもう帰ろうか、と葉音を連れて出入り口へ向かった。

 

 だけど。



 視界の隅に、このところよく見る後ろ姿があった。

 私はそこに目を向けて、叫んだ。

 店内に響き渡る大きな声。

「あ、蒼井静香!」

 その人は、蒼井静香は、驚きの含まれた表情で私の方を振り返った。

 そして俯いて、走り出そうとした。

「待ってよ!」

 その手を握り締める。気がついたら、左手にあった小さな手の感触はなくなり、代わりに、静香の冷めた手の感触が右手に伝わってきた。

 葉音は「お姉ちゃん、僕トイレ!」と言って逃げ出した。きっとただならぬオーラを感じたのだろう。

 っていうか葉音はトイレじゃないだろ。


「な、何ですか?」

 静香は困った様子で私の方を見た。眉をぴくぴくさせている。

「何ですかじゃないわよ」

 私はとても険しい顔つきだったのだろうか、静香は目を見開いて、呼吸を繰り返した。

「あんたさ、久我先輩の好きな人知ってる?」

 静香は、「え?」とでもいうように首を捻った。

「し、知らないです」

 そして、首を横に振る。

「そうよね。だって、あの人の好きな人は、超意外な人だもんね」

 私は、眉が痙攣しているのを感じた。

「そ、そんな事、人前で話しちゃってもいいの?」

 静香は、周りを見る。だが周りの客はどう考えても私達の事を見ていない。

「人なんて私達の事気にしてないんだからいいんだよ。…久我先輩の好きな人は」

 私は思わず言ってしまう。


「あんたよ!」


 言った瞬間、涙が出てきてしまう。

「あんたのことが気になってるって久我先輩が言ってたわよ!」

「え…?」

 驚きに満ちた表情で、静香は言った。

「そんな、…有り得ない」

 もはや言葉にするのも精一杯ってくらいだった。静香は持っていた買い物袋を、パサッと落とした。

「嘘でしょ? だって、そんなこと…」

「あんたは、遥君が好きなんでしょ? 知ってんだよ! なのに、あんたが久我先輩に好かれてるって聞いて、ショックだったよ。静香の恋が、叶わなきゃいいのに…」

 最後は、殆ど言葉になっていなかった。

 涙で視界が滲む。静香の顔も、まともに見れなくなっていた。

 だけど、静香が、目を見開いているのが容易に分かった。

「どうしてって思ってるでしょ? 有咲との話聞いてたわよ! だって、私…」


 久我先輩が好きだから。

 

 何度も心の中で言った言葉。

 私は、嗚咽を繰り返した。

 出来れば、久我先輩に伝えたかった。


「…でも、だからって、こういうのはないんじゃない?」

 

 突然、静香は冷めた声で言った。

 私は、自分だけが騒ぐのが恥ずかしくなって、思わず挑発してしまった。

「は…? こういうのって何よ! アンタは遥が好きなんでしょう? 遥のこと、ずっと想ってたらいいじゃない!」

 私は息を荒らげる。

「でも残念ね、遥君には好きな人がいたのよ! 大事に想ってる人が!」

 加奈さんって人がね。

 でも、それを言うより早く、静香はひどく落ち着いた声で言った。


「違うよ。後ろ」

 

「は? 何、後ろ…? !!!!」


 私は振り返って、愕然とした。



 こんな偶然、あっていいのだろうか。

 だって、後ろには、いたんだから。

 

 久我先輩が。


 ◇◆


 花音は、優しい子だった。

 突然遊びに誘った僕を、警察に通報もしようとせず、友達になろうとしてくれたのだ。

 こんな明るい後輩と友達になれて、僕は幸せ者だった。

 

 僕がクラスでその話をしていると、いつも周りは久我は花音のことが好き、と決め付けようとしていた。

 確かに彼女は女の子っぽくて、女子力の最高峰という感じだけど、別に男子に媚びたりとかぶりっ子っぽいということはまず無かった。

 その点は、男子にも女子にも好かれる子だった。


 彼女は家庭科クラブに所属していたが、彼女のいる班はいつも失敗していると、クラスメートから聞いていた。

 だけど、そんな彼女が僕は完璧すぎなくていいな、と思っていた。


 彼女からの好意は、何となく感じていた、とでも言っていい。

 こう言うと自意識過剰って言われることは分かっていた。だから感じているだけ、と言うことにしておいた。

 勿論誰にも言わないことにしておいた。彼女は純情で誰にでも優しいから、きっと僕以上に優しくしてる人がいるんだろうな、と感じていた。


 だけど、心の中に、ある人が住み始めてから、僕は花音よりもっと別のことを気にし始めていた。


 花音よりももっと前から親しくなっていた女の子、蒼井静香。

 その子が五年生になり、僕らが六年生になった、今年。彼女は僕と同じ保健委員になった。

 何やら、どうにも保健室に興味があるらしかった。

 その子と活動するうちに、段々と惹かれていったのだった。

 花音よりもずっと話し合う時間が多くて、女子力の最高峰(家庭的な能力を除いて)の花音よりも、静香が身近に感じて、すごくいい人だと思ったのだ。

 だから、好きになったと言ってもいい。


 でも、花音のことはいい人だと思ったのだ。

 女の子らしくて、可愛くて、清潔で、優しくて、綺麗で、いつもシャンプーのいい匂いがした。

 静香より数百倍ぐらい女の子っぽくて(超失礼)、静香よりもモテ要素が多い。

 僕が好きな人を親友に話したとき、親友は意外そうな顔をしていた。

「広樹を慕ってくる花音の方が好きなんだと思った! 何で女子力の最底辺の静香を好きになるのさ」

 さりげなくものすごく失礼なことを言っているが、それでも一般的な人から見れば、僕が静香を好きになるのは意外なことだったんだと思う。


 

 だけど、その優しい花音が、僕の想い人を暴露していた。

「く、久我先輩…?」

 花音は驚きのあまり、声が裏返ってしまっていた。

「ど、どうしてここに…」

 それはこっちの台詞だ。

 ここにいることはまだしも。


 何で僕の気になってる人を、気になってる人の目の前で言っちゃうわけさ。


 静香が、虚ろな目をしている。これから何が起きるか分からないのだろうか。


 僕だって分からない。


「花音、君は…」

 突然、僕の口からスルスルと言葉が漏れた。

 花音が目を見開いてるのが分かる。

 思っていた言葉をそのまま口にしてしまう。


「君は、思いやりのない人なんだね」


 自分が言った言葉がどれほど最低な言葉か、痛いほど分かった。

 でも、それしか言えなかった。

 

「そんな、でも、久我先輩…」


「僕は、君のことも、いい人だと思ってたよ」

 

 あぁ、僕はなんて言葉を言ってしまったんだろう。

 花音は涙目ですがり付いてくるし、僕の想い人である静香は、俯いていて、表情が見えない。


「でも、君は、僕の恋を、終わらせた。…そのことについてはひどいと思ってる」


「く、久我先輩…」


 花音は、泣き出した。

 周りの人は、泣き出した花音を見て、ひそひそ話している。

 きっと、僕に対する非難の言葉だろう。

 女の子泣かして最低ね、とか、きっとその類の言葉。


 でも、関係なかった。


「僕はね、君のことが嫌いになったよ」

 

 僕はなんて最低なんだろう。

 きっと静香も、最低だ、と思っただろう。


 でも、僕は、怯まなかった。

 だって、僕の恋は終わったも同然なんだもの。



 何も言わずに走り去っていった花音を、静香は慌てて追いかけた。

 物陰から小さな男の子が現れて、花音を追いかけたのもまた見えた。


「嫌われたね…。静香にも、花音にも…」

 わざわざ声に出さなくても、痛いほど分かっている。そんな事は。


「さぁて、帰るか…」

 僕は、出入り口に向かって、歩き出した。

 今までの物語全部編集します。

「!」や「?」の後に一マス空けてなかったり、会話文の最後に「。」がついていたりするものも抜いたりしていきます。

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