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小学生の恋物語。  作者: けふまろ
花音の想い。
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ライバル登場。

 夏休みのある日。

 遥君が、砂月加奈さんを好きになったと話していた、翌日。

 事件が起きた。


 その日は、学校登校日だった。

 七月に接近してきた台風で、私達の学び舎である東麻呂市立第二小学校は、平日に休みになり、その代わり、夏休みに登校日を設けて失った時間分授業するという最悪な登校日だった。

 おまけに最高気温三十℃とかいう「ホントマジふざけんな」の気温だったので、殆どの人はノースリーブだった。

 中にはタンクトップ&短パンのこれぞ日本の男子という男子もいた。


「あー、彩ちゃん、久しぶり! すっごい焼けたね~」

 私は久しぶりに見た親友の元へ駆け寄る。

「海に行ったからね。超気持ちよかった! 花音ちゃん、遅れたけど、久しぶり」

 彩ちゃんは飛び跳ねて机の上に飛び乗った。

「にしても、皆焼けたね~」

「ホントだ!」

 私達の周りを見渡すと、日に焼けた人が男女問わず多くいた。

 中でもスポーツをしている人は、一学期の最後とは別人のように肌が黒かった。

「そーいえば、花音ちゃんは焼けてないね。外出てないの?」

 彩ちゃんは私の腕を見た。確かに、彩ちゃんの腕と見比べると、私の腕は格段に白い。

「外出てるけど、日焼け止め塗ってるから大丈夫だよ」

「そっか、私も日焼け止め塗ればいいのか! ありがとう花音ちゃん!」

 彩ちゃんは私の手を握って、笑った。

 やっぱり、彩ちゃんの笑顔は、無邪気な感じがして、好きだ。


 中休み。

 一学期と何ら変わりない光景が、校庭には広がっていた。

 ベランダで校庭を眺めている私と彩ちゃん。

 私は真夏の太陽から目を伏せて、呟いた。

「ホーント、一学期と全然変わんない風景だよね~」

 すると、私の呟きに反応したのか、彩ちゃんは、

「何言ってんのよ花音ちゃん。皆の肌の色が真っ黒に変わってるじゃない」

と言った。

 彩ちゃんは「あいつに、あいつに、あの子も」と細長い指で指差していた。

「まだ八月の始めなのに、皆焼けてるよね」

 私がしみじみと言うと、彩ちゃんは「ね~」と相づちを打った。


「ってあれ、久我広樹先輩じゃない?」

 彩ちゃんが突然言葉を発した。

私は、「え? どこどこ?」と校庭に目をやる。目を見開いて、じっくり探そうとする。

「花音ちゃん、いくら久我先輩が好きだからって、食いつきすぎよ」

 彩ちゃんは、笑いながら言った。

 唯一、彩ちゃんだけには、久我さんが好きだと話している。

 好きだと気付いたのは、彩ちゃんに「久我さんのことが気になってる」と話したときだった。

 彩ちゃんと久我さんは同じバンドクラブに入っている。彩ちゃんはトロンボーン、久我さんはトランペットらしい。

「で、どこ?」

 私の必死の尋ねに、彩ちゃんは、細長い指をスッと一つの方向に向けた。


「あそこ…ってあれ?」

 私もその方向に目を向ける。

 そして、凍りついた。

 

 そこに、女の子がいたからだ。

「あの人って…」

 私は、彩ちゃんに目を向ける。誰か知っているかもしれないからだ。

「知らない…」

 だが彩ちゃんは、首を横に振った。

「誰?」

 私は、悔しい思いでいっぱいだった。



 あの女の子は、誰なの?

 私は、あの女の子の特徴を思い出す。

 遠めに見たあの子の姿は、眼鏡をかけていて、ショートヘアで、ジーンズ姿だった。

 シンプルな服装で、いつも女の子っぽい服装の私とは大違いだった。

 でも、どっかで見た事ある…。

 私はそのことばかり考えて、塾に向かった。

 お弁当やらノートやらテキストやら入っている鞄が、いつもより重く感じられた。

「こんにちは、宮野さん」

 私が考えていると、後ろから誰かに声をかけられた。

 振り返ると、遥君がいた。

「あ、遥君。こんにちは」

 午後三時のアスファルトの道に、私の影と、スタイルの良い遥君の影が移し出される。現実って何でこんなにも非情なんだろう。格差がありすぎる。

「…どうしたの、元気ないね」

「ちょっとね」

 遥君は私を気にかけて尋ねてくれる。しかし、気にかけてくれる彼には悪いものだが、私の心の傷は塾内トップクラスで成績&容姿が良い遥君でも癒せそうになかった。

「ふぅん。…何かありそうだけどね」

 遥君は、それ以降、何も尋ねてこなかった。

 塾について、私は受付を済ませ、教室まで歩いた。

 すると。


 ドンッ!


 私は、誰かとぶつかってしまった。

「痛っ! あ、すいません」

 私は声が裏返って、小声で言った。

「…あ、ご、ごめんなさい! ごめんなさい! 大丈夫ですか?」

 すると、ぶつかった子は、二回も謝って、私の事を気にかけてくれた。

 何て優しい子なんだろう。


「大丈夫だよ。ありがとう」

 私はそう言って、うつむいていた顔を上げた。

 そして私は、「あっ」と呟いた。

 

 久我さんと一緒にいた、あの子だったからだ。

 私は咄嗟に、彼女の鞄を見る。

 名札を見る。


蒼井静香(あおいしずか)


 私は、その名前を、頭の中で繰り返した。

 蒼井静香、蒼井静香、蒼井静香…。

 私は、蒼井静香の後姿を見た。

 彼女は、トイレに姿を消した。


「絶対、負けない…」


 蒼井静香の後姿を見送りながら、立ち上がって呟いた。

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