クリスマスデート
想太達が楽しみにしていたクリスマスデートが短く終わっています。
「おーい! 想太!」
私はクリスマスデートの場所へ向かっていた。
「あ、加奈…」
考え事をしていたのか、想太は気難しそうな顔を一転させて、喜びの顔になっている。
私に会えたのがそんな嬉しかったのか、と思ったけど、それは自意識過剰っぽかったのでやめた。
想太と並んで電車に乗り、デパートに着いた。
私は財布の中身を確認した。福沢諭吉さんが十枚、樋口一葉が一枚。大金である。後で両親に渡しておこう。多分千円ぐらいの買い物しかしないからな。
何かデパートの前に、サンタの格好をした店員がチラシを配っている。今まさにクリスマスだな。
平和な世の中を見て、私は心の中で何かが浄化されたのを感じた。
私はショッピングを楽しんだ。
服が立ち並ぶ店に行くと、クリスマスのセールで賑わっていた。
スタイルの良い女性が沢山いる。カップルもいる。マネキンを見てキャーキャー言っている。
こんな洗練された場所に凡人の私がいる事が間違っている。
ルックスも良い想太が行った方が良い。
なわけで。
「想太、行って来い」
「え、どこに?」
「あそこに行くのは凡人の私には無理すぎる。なわけで、ルックスの良いお前が行け」
「は?」
一連のやり取りをする私達。先程までは否定していた想太だが、私の目の威圧を見て諦めた。
「分かった。どれを買っていけばいいの?」
私は福沢諭吉さんを一枚渡し、想太に買っていかせようとした。想太、初めての女物のお買い物である。
「あそこにマネキンがあるだろ。店員さんに聞いてもらえ。そして私が行く」
「何で俺が行くの? めちゃめちゃ恥ずかしいんだけど」
理解が出来ないようだな。私が説得してやる。
「もう一度言うね? 凡人で胴長短足の私よりも、胴短足長でルックスが良い想太が行った方が良いって」
「女性用の服買いに行くのに男子が行くと思う? 行けるわけないでしょ?」
説得の効果もむなしく、想太は激しく首を横に振った。
「は? ふざけんな。…分かった、私が行くよ」
なわけで洒落たストリートファッションを試着したまま買ってきた服を着て、昼ご飯を食べに向かった。
「よし。私、注文しようか?」
「いいよ。俺はカレーね」
この前(遥君とデパートに遊びに行ったとき)の中華料理店とは違い、洋食屋に向かった。
「お待たせしました。シーフードカレーと、包み焼きハンバーグです」
料理が出される。私は「いただきます」と言って包み焼きハンバーグを食べた。
「ふぉいひい~」
美味しいと言ったつもりだが、どうだろう。
「あのさ、俺シーフード以外って言ったよね?」
「言ってませんでした。言ってても注文するつもりでした。ちなみに自分の分は自分で食べてね」
想太が毎回理不尽な目に会ってるって? 知らねー。
帰り道。
今日いっぱい楽しんだ。
そして、年が明ける。
楽しみにしている。新しい年の幕開けを。
そして、最高学年への道を。
電車に乗って、家路についた。
もうそろそろで想太とお別れだ。
寂しいな。そう、思った。
「あのさ、加奈。重要な話があるんだ」
突然、そう言われた時は、思わず振り返ってしまった。
「何?」
私は、尋ねずにはいられなかった。
「俺、もうすぐ、お兄ちゃんになる」
想太は、しっかり、力強く、そう言った。
それは、兄のように頼もしくて。想太の目は、未来に希望を持った、綺麗で美しい瞳だった。
私は、嬉しくなって、微笑んで、言った。
「そっか。おめでとう、想太お兄ちゃん!」
◇◆
新年が明けて、もうすぐ一週間。
もうそろそろ、三学期だ。
五年生最後の学期、三学期。そして、六年生の、ゼロ学期。
私達は、着実に、中学へと、大人へと近付いている。
そして、想太との、別れも。
大好きな人と、一緒にいたい。
でもそれが叶わないときは。
その人と、ずっと一緒に入れなくなったときは。
その人のことを、いつでも思い出せるように。
沢山思い出を作らなくちゃ。
想太達が楽しみにしていたクリスマスデートが短く終わっています。
新年明けるの早すぎィ!
はい。




