想太の思い。
俺は家を出た。
綺麗な街並みが俺の心をどんどん飾っていく。
装飾された街は、弟か妹が出来る俺の心に響くような綺麗さで。
加奈の事もあるし、兄弟への不安もある。
でも、その不安を乗り越えてやってくるのは、幸せだ。
自分はこんなにも幸せに恵まれているのだ。
もし、友達も多い人気者が、家族にも愛されている人気者が、習い事や学校の勉強が上手く行かなくて、「死にたい」って言ってきたら。
俺は、何て言うだろう。
世の中、沢山の人達がいる。
世界のあちこちで、住む家も、食べる物も、着る服もない人達が、給料が少ない仕事に就いて、少ないお金で、どうにか生きようと頑張っている人もいる。
虐待されて、自分に価値があるのか分からない人もいる。でもその人も、相談室に駆け込んで、生きる希望を無くさないために、頑張っている。
いじめられて、自殺してしまった人がいる。周りの人がその人を死ぬまで追い詰めた。だから自殺してしまった。でも、その人も、生きようと頑張った。
だから、友達から、家族から、皆から愛される人気者が、そんな簡単に死ぬなんて言っちゃ駄目だ。
ましてや、その人が本当に死んでしまったら、一番辛いのは、苦しい思いをして死んだ本人よりも、大切にしていた人が、二度と帰ってこない場所に行ってしまった、周りの人だ。
だから、絶対に、容易く死にたいなんて言わない方が良い。
俺は、その人気者に、そう言う。
生きているだけで、素晴らしい。
命がある。それだけで幸せだと思う。
着る物も、食べる物も、住む場所もあって、友達や家族から愛される。そんな人が、勉強や習い事が上手く出来なかったからって、死ぬのは、絶対に間違っていると思う。
たとえ、皆から必要とされなくても。
皆から邪魔者扱いされても。
餓死しそうな空間にいても。
生きる希望が、見付からなくても。
それでも、世界には、その人を助けたがっている人がいる。
そして、俺も、その一人だ。
昔、雑誌で、世界のある街が爆破して、大勢の人が死に、多くの建物がボロボロになった事件があった。
そこで一生懸命生きている人達が、そのライターによって映し出された。
最初は、「こんな所に住んでるの、ええ、ありえない!」と、自分の部屋の、暖かい布団の中で、笑いながら読んでいた。
でも、その行いは、間違っていた。
世界中の、俺と同じくらいの年の子供達が、一生懸命働いて、少ないお金でどうにか生きていく姿を見て、俺は今やっと、気持ちが変わったのだ。
今、俺は、弟か妹が生まれるかどうかの空間にいて、友達とは違うような意味で「好き」と言ってくれる人がいて、友達や親友に囲まれて、家族に愛されて。
でも、この人達は、生きるか死ぬかの境目にいて、いつまた街がめちゃめちゃになるか分からない、皆は自分が生きる事で精一杯で、他人のことなど目を向けようともしない。
そんな境遇にいる人達が、いつか今の俺みたいに、幸せになる日が来るように。
俺はそう願っている。




