それぞれのクリスマス
「メリークリスマス!」
家の中は、兄の大歓声に包まれる。両親が笑顔で兄を見つめている。
「何だよ、加奈も騒げよ」
「いいよ、お兄ちゃんほど騒がしくないし」
「言ったな~」
隣に座った兄が、私の髪をクシャクシャにした。
宮野さんの家から帰ってきた私の髪型はツインテールではなく、ポニーテールだ。
いつもとちょっと違う雰囲気の私に、兄は少し驚いたような顔をした。
「わ~、もう。やめてよ~」
チキンを食べながら兄に反抗する。兄が触る髪を直すと、後れ毛が少し出ているのが目についた。
◆◇
「想太、もう、部屋に篭ってゲームしないの。今日はクリスマスなんだから、早く下に来なさい」
母親が俺を促す。俺は携帯ゲーム機を閉じて舌打ちする。クリスマス限定のアイテムを購入しようとしていたのに。
「お父さんが奮発して色々美味しい物買ってきてくれたんだから、食べたいのよ。手を洗ってうがいしなさい」
うるさいなぁ、今、良いところなのに、と反抗しようとしたが、やめた。
最近、どうも母親の様子が変なのだ。お腹が大きいような気がする。
そのことに気付き始めたのは、二学期が終わった日であった。
俺が学校から帰ってきて、手を洗っていたら、母親が体重計に乗っていた。いつもはこの時間、会社にいるはずなのに、と思い、チラッと母親の体重に目をやった。
そしたら、目が点。
体重が増えていたのだ。
俺はそのとき、目を見開いて母親の体重を見ていた。母親がお菓子を食べる事などあまり無かった。
じゃあ一体何だろう。
俺はそのことを今日、母親に聞いてみようと思ったのだ。
「メリークリスマス!」
毎年お馴染みの言葉を聞いて、俺達森川家は乾杯した。
ジュースを飲みながら、ご飯にしゃぶりつく。何だっけ、コシヒカリだっけ。美味しいよな。
俺は両親が作ってくれたご飯をあっという間に食べ終わった。
そして冷蔵庫からケーキを出そうとしたときだ。
「ねぇ、想太、大切な話があるの」
急に両親が、俺に言った。
妙にしんみりとした雰囲気で、俺は頭に?マークを作りながら「何?」と尋ねた。
「実は、想太に、兄弟が出来たみたいなの」
母親が自分のお腹を撫でながら言った。
母親のお腹の中にあるのは、脂肪ではなく、赤ちゃんだったと気付くのは、容易だった。
「えええええぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
森川家を劈く声が轟く。
そっか、そうなのか。
ようやく、兄弟が出来るのか。
俺は、一筋、涙を流した。
その日は、最高のクリスマスだった。




