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小学生の恋物語。  作者: けふまろ
クリスマス
69/95

宮野さんの家へ

 私は下見を再開した。

 すると…。


「待ってください、加奈さん!」

 

 宮野さんの声がした。

「え?」

 私のことか。それよりも、宮野さんがすごい息切れしてるけど…。

「あの、今日、家に来てください!」

「え?」

 またも聞き返してしまう。

「何で、宮野さんの家に…って、遥君は?」

 ふと隣を見ると、葉音君しかいない。遥君がいない。

「トイレに行って来ると言って、その場で待たせました」

 言い方が変な感じだが、気にしないでおこう。きっと悪意があったわけじゃないだろう。

「それで、えーと、クリスマスのときに、遥君を家にお招きしたいんです。そのとき、林檎を切ろうと思うんですけど、私、林檎を切るといつも変な形になってしまって…」

 それは意外だ。…まぁ宮野さんは女の子らしい割には家庭的な能力が壊滅的だと話していたからそれは仕方ないと思うけど…。

「あぁ、私じゃ何の役にも立たないと思うけど、一応林檎ぐらいは切れるから…」

「本当ですか?ありがとうございます」

 宮野さんはぺこりとお辞儀してくれた。

 そして「遥君を待たせてるから」と言って、遥君の方へ、葉音君の手を引いて走り出した。



 私は、宮野さん姉弟と一緒に宮野さんの家に向かう。

「私の家狭いけど、くつろいでいってね」と、宮野さんは言う。

 時間を確認する。午後二時。うん、くつろぐ時間は十分ある。

 そして、私達は話しながら歩いた。

「家は何? 一軒家? マンション?」

 私は今から行く家の特徴を尋ねる。

「マンション。ちなみに賃貸」

 賃貸ということは三階建てが多い。学年でもモテる女の子がそのマンションに住んでいた。

「ってことは、三階建て?」

「まぁそんなところかな。私の親友の両親が地主なんだ」

「へぇ、そうなんだ。…両親は共働き? 職業は?」

 私は親の職業に尋ねる。小学生らしからぬ話題かも知れない。

「両親は共働き。お父さんは駅前の有名な美容院の美容師。お母さんは大手出版社の校閲部」

「お洒落な仕事だね」

 校閲って確か帰社や作家が書いた文章を直す仕事だっけ?だったら私の書いた作文とか持ってけば校閲してくれるのかな。

「名前は?」

「お父さんは(かおる)、お母さんは(あかね)。私は花音で、弟は葉音」

 宮野家の男は中世的な名前だ。それは言わないでおこう。だけど、女の子はうんと女の子らしい名前だ。


「あ、着いた」

 宮野さんが言った。

「おー、このマンションか」

 確かミサちんが今のマンションに引っ越してくる前のマンションがこんな感じだった気がする。レンガ模様の壁に、通路が見える。一階の105号室に一輪車が立てられている。

 宮野さんは一階に入る。葉音君が花壇の角を渡っている。

 何かこういうマンションって落ち着く。

「私、結構人を家に誘ってるんだ」

 宮野さんが自分の部屋の扉、103号室に鍵を差し込みながら言った。

「オープンなんだね。そういう子って、親近感が沸いて男子にモテるらしいよ」

「やめてくださいよぉ、冷やかすのは」

 宮野さんが私の肩を小突く。

 そして、宮野さんは自分の家に入る。

「ただいまー」

「お母さんはいませーん」

 女の人の声がした。宮野さんのお母さんが居留守してるのかな?

 って言っても、誰もいないじゃない。辺りを見渡すと、葉音君がニヤニヤしていた。

 何だ、葉音君か。

「葉音、お母さんが居留守するときに使う言葉の真似をしない!」

 説明みたいな口調で言う宮野さん。教えてくれてありがとう。本気でお母さんが居留守しているのかと思っちゃった。

「はーい」

 しぶしぶ了承する葉音君。

「全く。…あ、入って」

 玄関から通される。リビングは白い壁で、ニトリっぽいコタツが置いてある。そしてその上に蜜柑(ミカン)の入ったかごが置いてある。

「お菓子が沢山余ってるから、どうぞ」

 そう言って、宮野さんはミルクチョコレートを差し出してくれた。

「美味しそう。頂きます」

 私は用紙を破って食べる。

 うん、美味しい。


「林檎、とりあえず切ってみよ」

 私は早速、林檎を切ろうとした。

 葉音君のやっているテレビゲームの音がうるさい。戦闘中らしいから、RPGゲームかな。

「青森産の林檎です」

 宮野さんがおずおずと包丁を差し出した。青森産か、ちょっとプレッシャーかかるな。

 私は切っていく。


 やっぱり、歪な形だ。

 私は包丁を握るとどうしても震えてしまう。

 昔兄が料理しているときに指をざくっと切ってしまったところを見てしまったからだろうか。第一発見者だったから、本当にびっくりした。

 林檎を切るときは、家には林檎を切るとき専用の小型ナイフがあったから、それで来たんだけど…。

「ごめんね、青森産の林檎なのに」

「いえいえ、私のお爺ちゃんが青森県に住んでるんで。いつでも送ってもらえます」

 それは良かった。宮野さんにとってこの林檎は、スーパーで売ってる林檎と言ってもおかしくは無いのか。

「次は、宮野さんが切る?」

「やってみます」

 そう言って宮野さんは台所の引き出しを開ける。

 そこから小型ナイフを取り出した。林檎のシールが貼ってある。

 最初からそれ出しておいてほしかった。


 宮野さんは小型ナイフで林檎の皮を切り出した。

 すると、どんどんナイフが実の方向へ…。

 そして左手に当たりそう…。

 私は思い切って宮野さんに言ってしまった。

「ちょっと宮野さん危ない危ない。親指でくいっ、くいってナイフのここを掴んで、切るの。実まで切らないように注意してね」

「あ、ごめんなさい!」

 宮野さんは怯えている。

「怯えなくて良いよ」

 私が悪いことしてるみたいじゃないか。

「そうですよね、すみません」

 宮野さんはもう一回挑戦している。

 今度は中央を切っている。そこは順調にやっていた。

「お、いい調子いい調子」


 私達は、自分達で切った歪な林檎をおやつとして食べた。


「じゃあ、もうそろそろ五時だし、帰るね」

「うん。またね加奈さん!」

「またねー、宮野さん!」


 私は、宮野さんの家を出て、帰路に着いた。

 さぁ、クリスマスよ、準備バッチリだ!

 兄がクリスマスケーキを買ってきてくれるだろう。

 プレゼントはゲームだ!

 サンタクロースの正体を知ってしまった今、私は高価なものを頼むまいとした。

 サンタの正体を知らなかった純粋な私が、高価なゲーム機を買ってよかったな、とつくづく思う。


「よし、明日のデート、バッチリだ! 明日が楽しみだな~」


 そう言って、茜色の空を見上げた。


 ◆◇


「お姉ちゃん、加奈お姉ちゃん、いい人だったね」

 宮野花音は、弟の宮野葉音に言われて、頷いた。

「そうだね。友達になりたいな…」

 そう言って、花音は窓の外を見つめた。

 その窓の向こうには、元気に歩いていく加奈の姿があった。

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