終業式
「長かった二学期もついに終わりを迎えました。明日からは冬休みです。今まで本当に色々ありました。魅力的な転校生が二人来ました。そして、えー…」
終業式の今日は、校長先生が壇上に立って話を進めている。
「先生の話ってうんざりするよな」
健一がぼやいた。莉以君もそれに同意するように頷いた。
「まぁまぁ、カレンダーが味方してくれて、23日から冬休みなんだから、いいじゃないか」
ポジティブに考えるのは、飯島奈波。
彼女はクリスマスは家族全員で過ごすらしい。海外旅行に行ってクリスマスを満喫する。…何と幸せであろうか。
そう、そして、冬休みが23日から始まることになる。
平成29年ぐらいから西暦が変わるとか変わらないとか言われているけど、天皇誕生日が金曜日で、24日が土曜日。更に、普通の学校の終業式だと言われてる25日は日曜日。つまり3日、休みが増えたわけだ。
「今日から私3泊4日の旅行に行くんだ。大都会でクリスマスを満喫するの」
「けっ、いいよな奈波の家は。両親が金持ちなんだろ?」
健一の言葉に、奈波は首を横に振った。
「違うよ。やっとお金をためて、それで出掛けるのよ」
庶民オーラを出す奈波。ザ・庶民の健一は、そんな奈波に嫌悪感すら抱いている。
「ま、俺は、家族全員と従兄弟家族全員で遊園地行くわ…。…そいえば、想太は加奈先輩と一緒にデートするんだろ?」
健一が当たっていることを言った。
「正解。加奈から誘われた」
ふぅん、そうなんだ、やっぱりね…。という表情で、健一はこちらを見た。微かに笑っている。コラ。
先生の話も終わり、通知表を渡された。
小学生が終業式に最も苦手とする時間の一つだ。
出席番号が25番の俺は、言われるのが後の方なので、十分余裕が出来る。
「健一、どうだった?」
俺は同じ班の健一に声をかける。
健一は「てんで駄目。最悪」と、通知表を見せてくれた。
確かに、お世辞でも「いい成績じゃん」とは言えない成績だった。
来年からは家庭科が授業に含まれるので、家庭科の成績は健一の器用さで何とかなるだろうが、算数が特にひどい。「もう少し」が、4分の3を締めている。国語はまぁ大丈夫だ。国語には「もう少し」が無いから大丈夫だけど。さては健一、文系だな。
「図工とかは多分このクラスで一番良い成績じゃない?」
俺は落ち込む健一の通知表を見て言った。この前作った立体作品は発泡スチロールでお城なんかを作ったりして、皆びっくりするような芸術性に富んだ作品だった。
「ありがとう。そう言ってくれるのは想太だけだよ」
健一は俺に抱きつく。俺は音の速さで瞬時に健一を払いのけ、順番を待った。
やがて通知表を渡され、俺は顔を真っ白にさせた。
「うっそ、4教科以外すげぇことになってる…」
国語算数理科社会、4教科はまだマシだけど、残る図工、音楽、体育等は最悪だった。
芸術性のある教科の「関心・意欲・態度」は全部「よくできる」だけど、関心とか意欲しか出来なかったら駄目じゃん。
もしかしたら健一よりも成績下なんじゃない?
それ最悪じゃん。
親友に対して失礼極まりないことを思ったが、それは心の片隅に置いておこう。
「あーあ。健一、全然駄目~」
俺は机に突っ伏した。健一以外話したくもない。
「どうしたの想太!……ありゃ、すごい成績。どうした、スランプか」
「スランプ何それ美味しいの~?」
完全に考えることを放置している俺を見て、健一は苦笑い。
「へぇ、学校に関しちゃ完璧だと思っていたのに、意外なことがあるんだね」
健一は俺の成績を学期ごとに見比べる。明らかに1学期の方がいい成績を取っていた。
「しかし、何で突然スランプなんか…」
「まあ、2学期超色々あったからね。まず遥先輩が転校してきたでしょ、次には運動会で女子に囲まれて、更に桐野実優が現れて、加奈先輩の友達が大喧嘩して…。そりゃあ勉強に集中しないのも当たり前だよ」
「それだっ! ……って、関心と意欲だけはあったぞ」
「でもな、いくら授業中よく発言する想太だから、関心意欲の成績は良かったんだ。たとえセンスが悪くても、授業に熱心に取り組んでいたら、そりゃ先生も頑張ってるって判子押してくれるよ」
いつにもまして冷静な親友の言葉に、俺は胸を打たれた。
そっか、俺、疲れてるのか…な?
「だからさ、クリスマス、加奈先輩と一緒にデートするんでしょ? そこでキスするなら、いいんじゃない? ちょうどいいストレスの発散にもなるし、楽しくなるでしょ?」
俺は健一の言葉に納得し…いや、ちょっと待て!
「今キスするって言ったよな?」
健一の言葉に怪しい言葉があった。キスするって何やねん。
「は? …あ、何、マズイこと言った?」
「言った!! もう、キスなんて冗談でも言わないでよね」
俺は健一に注意した。すると健一は目をうるうるさせて、こんなこと言った。
「えぇ、うそぉ! 普通、好きな人とキスしたいって、誰もが思うでしょ!?」
「皆思っても俺は思わない!」
本当は思っていた。
けれど、それ言っちゃうと、恥ずかしくて。
「想太って、変だねぇ…」
そう言って、健一は自分の通知表を見た。
「あ、よく見れば体育の成績が良いじゃん!」
やっぱ、俺、健一よりも、成績が悪いのかもしれない!




