転校生の嘘6
ミサちんはその後、家に戻っていたらしい。
やがて先生がミサちんのランドセルを持って、職員室に向かっていった。
「何あれ、自分勝手すぎない?」
茉莉花が綺麗な髪をなびかせながら言った。
今は休み時間。私は教室に残り、茉莉花の話を聞いていた。
「だってさ、私達の意見ガン無視でそんなこと言ってんだよ!? マジありえなくない!? 迷惑かけてるってこと考えてほしいよね~」
茉莉花が言う言葉に皆が頷いた。
「そうよね、やっぱ、あんな人の迷惑考えないクズはこのクラスにいてほしくないよね~」
ふいに誰かが言った。
ムッとして振り向いた。
言ったのは、茉莉花の側近っぽい女の子だ。天然パーマの髪にチェックのワンピースにレギンスの男子にいい感じと思われる女の子だ。
「何てこと言うのよ!」
突然、凛とした澄んだ声が響いた。
「誰? 美咲の悪口言ってただけなのに!」
「言った奴誰よ、今なら謝っても許してあげるわ。男子いないから、恥かかなくてよかったね!」
茉莉花達が声の主を探す。
だけど、声の主は意外と早く見付かった。
「喧嘩しても、どんだけ嫌いでも、それでも、友達の悪口言われるの、嫌だから!」
さえっちだった。
誰も自分の意見を押し曲げることは出来ない。澄み切った、凛としたその声は、今までの、控えめなさえっちからは想像もつかないような、声だった。
「紗枝さん? …もう、何訳分かんないこと言ってんの? アンタ散々殴られたのによく飽きないわねあんな奴のこと!」
茉莉花は紗枝に向かってそんなことを言った。その声には棘があった。
「頭大丈夫!? 迷惑女のこと、悪口言って当然でしょ? そんなことすら知らないの? 馬鹿なの?」
意地悪を通り越した、嫌味たっぷりのその声に、さえっちは一瞬震えた。
でも、それでも。
「嫌だよ!たとえ友達じゃなくなっても、それ以上、美咲ちゃんの悪口を聞くの、辛いよ…」
さえっちの言葉で、茉莉花達は敵だと認識したらしい。
「こいつ、ムカつく…」
私は見た。
茉莉花の、目の、汚さを。
さえっちの、目の、綺麗さを。
それを見た途端、私は口を開いた。
「やめよう、ミサちんの悪口言うの。…やめてよ、もう私は、3人で、仲良く、帰りたいよ?」
私は、さえっちの手を引いて、言った。
さえっちの手はひんやり冷たくて。
でもそれが、友情の復活を描いていたように思えて。
それが私は、嬉しかったんだ。
「私、今日、美咲ちゃんの家に、手紙を届けるよ」
帰りの会が終わり、私はさえっちの言葉に、胸躍らせた。
「そして、ちゃんと話してくる。…勘違いしているみたいだったから」
私はその言葉に、ちょっと涙を浮かべ、こう言った。
「仲直りしてくれて、ありがとう…」




