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小学生の恋物語。  作者: けふまろ
転校生と友情
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転校生の嘘3

 ミサちんの家へ遊びに来た私、砂月加奈は、立ち上がり、かくれんぼをしようと提案した。

 だが、その提案に、遊びに来ていた森川想太も、ミサちんの弟の莉以君も、当然、ミサちんも白い目で私を見つめていた。

「え? かくれんぼ? 私の家で? 無理じゃない?」

 ミサちんが怪訝そうな目で見つめている。想太は目を逸らしてストローでジュースを吸っている。おい、先輩を恥ずかしく思うんじゃない。これでもネットでは超有名なんだぞ。

「想太君も、そう思ってるよね?」

 莉以君の声に、想太は首を縦に振った。

 確かに同年代の女の子の家だとは思えないほどに綺麗に片付いているミサちんの家では、かくれんぼは無理かもしれない。

「でも、多少位置がずれてもいいよ。うち両親とも夜勤で帰ってこないから、二人が帰ったら莉以と二人で片付けるから」

「え、ちょっと待ってよ姉ちゃん。俺達二人で片付けろって言うの?」

「そうだけど?」

「ひぇ~。何でこういうときに限って親がいないんだよ~。毎度毎度俺困ってるのに~」

 莉以君はミサちんの言葉に悲鳴を上げて倒れこんだ。

「え、莉以の家、親が夜勤の日が多いの?」

 想太が莉以君に尋ねている。

「あぁ、私の家、親が夜勤の日が本当に多くてね。特にお母さんには毎日会えないんだけど、その代わり、美味しいご飯を作ってくれるんだよね。そしてお土産も買ってくれるし」

 莉以君の代わりにミサちんが答えた。

「へぇ、そうなんだ」

 想太が感心したように言う。両親といない時間が他の人と比べて多いので、大人っぽくなったんだろうな。

 そう思っていると、私のスマホに電話がかかってきた。

「誰だろ…。あ、さえっちだ」

 さえっちと書かれた番号をタップする。「はい」と出る私。

『あ、加奈ちゃん? 今私、明栄小学校の、相沢空蒼ちゃんって子と一緒にいるんだけどね』

「相沢空蒼ちゃん? 明栄小?」

 聞きなれない単語に首を捻っていると、想太が「あぁ」と思い出したように言った。

「知ってる。その小学校、私立小学校だよ。母さんが行きたかった学校みたいだから」

 へぇ、想太も知ってるってことは、皆知ってるってことか。私だけ知らないなんて、ちょっと…。

「それで、そんな子とどうして一緒にいるの?」

『今からそっち行くんだ』

 さえっちは私の言葉を聞かず、電話を切った。


 数十分して、ミサちんの家のベランダから、さえっちの姿が見えた。

 小さな女の子を連れている。

 私が大きく手を振ると、向こうも気付いてくれたみたいで、頭上を向き、手を振ってくれた。

「…あの子、相沢さん家の子供か?」

 ミサちんは相沢空蒼ちゃんを見た途端、眉を潜めてそう言った。

「知ってるの?」

 私が言うと、ミサちんは首を縦に振った。

「うん。近くの部屋のオバサン達が話してた。父子家庭とか、離婚問題とか、浮気とか、そういうこと含めて全部。…その、空蒼ちゃん…? の家が最上階なんだけど、そのこともあるんじゃないかって話も浮かんできてね…」

 どうやら、相沢空蒼ちゃんの家には、何か事情があるようだった。


「ごめん、遅くなったね」

 しばらく経って、達成感に満ち溢れた表情のさえっちが、ミサちんの家に入ってきた。

「ピアノ教室の帰りに、空蒼ちゃんを見付けてね、マンションが美咲ちゃんの家と同じだったから、交番に行かずに、こっちに来ちゃったんだ」

 さえっちは、事情を説明してくれた。

「で、ここによる途中、何かお腹すくなぁと思って、スーパーでおにぎり2つ買ってきたんだ。…で、そのときに、空蒼ちゃんが急におびえ始めてね、どうやら、そのスーパーでお姉さんがバイトしてるらしいんだ。もしも見付かったら迷子になって私に案内してもらったのばれて怒られるからって言って、私の体に隠れちゃってね、それで私、お姉さんがレジから陳列を整えるためにお菓子売り場に行ったのと同時にレジに滑り込んでね、本当に神ってたわぁ、あの動作」

「それ自分で言っちゃう~?」

 私達がクッキーを食べながら駄弁っていると、チャイムが鳴った。

「はーい。」

 私達は、出ていくミサちんを見送る。

 すると、ドアを開けたミサちんの顔が曇った。

「…何、茉莉花」

 茉莉花? …えーと、小池茉莉花さんとその友達かなぁ? 玄関に立ってるの。クラスのリーダー、清香さんとは正反対のぶりっ子のような気がしますけど…。

「どうしたの、犯罪者家に上げて」

 茉莉花が大きな声でそう言った。玄関先から、ミサちんの息を呑む音が聞こえた。

「え? 誰が犯罪者なの?」

「知らん。俺に聞くな」

 莉以君が想太に尋ねる。

「茉莉花ちゃん?」

 さえっちが首を捻る。

「あーいた、犯罪者! 山田紗枝!」

 茉莉花がさえっちの方を指差した。

「え? 私が、犯罪者?」

 さえっちが自分を指差して慌てる。

「ちょっと茉莉花! 嘘つかないでよ! 紗枝が犯罪者なんて、そんなわけないでしょ!」

 ミサちんが茉莉花に掴みかかる。

「嘘ついてないわよ。今日、桐野実優ちゃんが見たのよ。紗枝が万引きしてるとこ」

「万引き?」

 茉莉花の言葉に、ミサちんが息を呑んだ。

「さえっち、万引きしたの?」

「違う、私、してないよ加奈ちゃん。信じてよ」

 私の問いに、さえっちは首を横に振った。その目には、うっすら涙まで浮かんでいる。

「ちょっと、桐野実優もデタラメ言ってるんでしょ! あんた達がグルだなんて、ありきたりな話よね!」

 ミサちんはまたも茉莉花に掴みかかる。

「もう、何よ、そんな嘘言いにわざわざここまで来たの!? そんな嘘言うために紗枝をつけて来たんなら、警察に通報するよ、クラスメートでも!」

「貴方に何の権利があるって言うのよ」

 茉莉花はあくまでも冷静だ。でもそれに反するかのように、ミサちんは顔を赤く染めている。後ろからでもハッキリ分かる。今日ミサちんはポニーテールにしているから、耳まで赤くなっているのが容易に分かったのだ。

 ミサちんは言った。

「もう、ふざけないでよ! 証拠はあるの?」

「あるわよぉ」

「何ですって? 無実を証明する証拠なら見せてみなよ!」

 ミサちんが足までを、全身を真っ赤にした様子で言った。

「はいはーい、…ほら見て、録音機」

 突然桐野実優が現れて、お洒落な鞄の中から刑事さんが使ってそうなゴツイ録音機を取り出して、スイッチを押した。

『なんだぁ、空蒼ちゃん、お姉さん、怖いの? じゃあ私、レジ通らないで入り口まで行くよ』

 

 さえっちの声だ。


「違う、私、そんなこと言ってない!」

 さえっちが泣きながらそう言った。

「ちょ、ちょっと桐野、紗枝さんに謝れよ」

「うっせ猿!」

「猿だと!?」

 桐野実優の暴言に、莉以君は顔を真っ赤にした。

「もう、ちょっと、皆落ち着いてよマジ!」

 想太の声も、皆に届かなかった。

 次の瞬間。


「もう、知らねーよ!」

 ミサちんが茉莉花を突き飛ばして、走り出した。

「ってぇな、おい、美咲、謝れよ!」

 茉莉花は叫んだが、その言葉は、ミサちんに届いていなかったようだった。

雑。

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