萩尾直人の事情説明
何気に萩尾の名前が判明しているっていうね…。
よく俺は、「萩尾」と呼ばれる。
名前の、「直人」で呼ばれたことはあまりない。家族ぐらいしか、名前で呼んでくれる人はいないかもしれない。同じ塾の人達も、「萩尾君」とか「萩尾さん」とかそのまんま呼び捨ての「萩尾」とか。直人って呼ばれたことは今一度、ない。と思う。
そんな俺は、現在、熱烈片想い中。
相手は、畑野清香。
よく女子からはさややん、とか、畑野さん、清香さんって呼ばれている。
「清香と一緒に一夜を過ごせたら、どんなに幸せか…」
そんなことを、夜寝る前のベットで考えていた。
俺は、毎日清香を目で追っていた。
清香と目が合ったことはまだ一度もない。テストをして悩んでいる清香をじっと見つめたり、夏休みに行われる学校のキャンプで、同じ行動する班になったときにも、肝試しで気絶して泡を吹いている(それかなり危ない)清香を笑いながら見つめたり、…清香が見てないところで見ているのだ。
そんな報われない俺に、恋の神様は笑ってくれた。微笑んで、奇跡を差し出してくれた。
運動会の振り返り休日を使っての、キャンプ。遥が話していたところを、偶然聞きつけて、行くことになった。
妹の穂香は行きたいとは言わなかった。無言で兄を見送る妹。ドライだなぁ。
彼女はインドア派だ。もうちょっと外出ないと、素敵な出会いはないぞ? お兄ちゃん知ってるんだぞ? いつも図書館から借りてきた恋物語を見てニヤニヤ笑ってんの。
そうして俺は、肝試しを済ませて、バーベキューもたらふく食べ、午前零時。今ちょうど、清香に呼び出されたのだ。
「何清香。俺眠いんだけど。早くして」
こんな意地悪な言い方したけど、本当は期待している。
まさか悩み事相談? …恋の相談はちょっと勘弁してほしい。
俺が目をこすりながら清香の方を向くと、清香はこんなことを言った。
「私、萩尾の事が好きなの」




