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小学生の恋物語。  作者: けふまろ
運動会とライバル
29/95

運動会 ー前編ー

『これより、第56回東麻呂(ひがしまろ)市立第十小学校運動会を始めます。一同、礼』

 美咲さんの挨拶。どうやら運動会の開会式と閉会式の司会は美咲さんのようだ。

「あの姉さんのわりにはちゃんとしてるなぁ」

 ちょっと前の列から莉以君の声がした。

 そういえば莉以君も同じ白組だ。

 今年の運動会は白組は有利だった。

 選抜リレーに莉以は選ばれ、俺も選ばれた。相手チームには足の速い神田君という男の子がいるから気を付けなくては。

 更に更には俺のチームには遥がいるからすっげー心配ないんだけど、目標は運動会に加奈との接近はあるか、ということだった。

 遥は彼女の連絡先を交換してからどんどん加奈の家に遊びに行っているらしいが、俺は一回も彼女の家に遊びに行ったことが無い。

 だからつい一週間前、母親からお下がりのスマホ(ケースがカッコいい)を貰ったときは、一時俺の部屋と俺の心はカオス状態になっていた。

 そうして彼女のメアドを知ってからおおよそ一時間もたたぬ間に、俺は即メールしていた。

 あれは確か夜の十時だったけど、読んでくれたかな?


『明日は運動会。緊張するね。

 でも、どんなに緊張しても、

 俺は加奈の味方だから。

 遥に負けないくらいの奴になるから』


 今となってはあれ、恥ずかしいに極まっているメールだけど…。

 読んでくれているかなぁ。加奈の親に見られたら恥ずかしいけど…。


 一方、砂月家のレジャーシートでは、加奈のスマホを親子三人(父親、母親、兄)で覗き見していた。その三人の目からは涙が流れている…。

「『明日は運動会。緊張するね。

  でも、どんなに緊張しても、

  俺は加奈の味方だから。

  遥に負けないくらいの奴になるから』

 親父、俺の妹に、か、かか彼氏が…」

「そうか、そうか、ついに、加奈にも、彼氏が…」

「私、嬉しいかぎりよ…」

「俺も、妹に、彼氏が、出来て、嬉しい、けど、悔しい…」

 三人は感激と、悔しさで、泣いていた…。


『次は、五年生による、五十メートル走です!』

 ナレーター席のマイクから恐ろしくデカイ声が響いた。

「この声、萩尾だな…」

「もうちょっと静かにしてほしいよ」

 五年生は萩尾、萩尾と呟きながら入場門に走っていった。

 どうやら、運動会このノリで放送する人がいたら、萩尾という男子の声と思って間違いないらしい。


 加奈は真ん中だった。

 真ん中はそんなに早くもなく遅くも無い。そんな人達が集うコースだった。

 ピストルの音がする。

 加奈は思いっきり走っている。

 走って、走って、走って…。全速力で走って…。

 何とか二位になった。

 俺は自分のことのように喜んだ。


「加奈、良かったな!」

 俺が退場門から出てくる加奈にピース。

 が。

 加奈は下を向いて気絶している状態。

 何とか遥が運んでいるけど。いやっていうか毎回毎回どっから登場して来るんだよ遥は。

「加奈さん、二位だったもんね。すごいよ」

「遥くんの方がすごいよ。最後で一位なんて」

「そうかな?だってこれ実力じゃないし、本気で走ってるもの」

「あれは本気で走ってるわけよね。だって十五秒でしょ? 私だって十九秒なんだよ、四秒の差って結構きついもんなのよ」

「そうだなぁ」

 遥は適当な様子で返す。

「あ、そういえば遥君は倒立出来る?」

「倒立? あぁ、補助倒立に蛙倒立も出来るけど?」

「羨ましいなぁ。私なんて倒立は三分の二の確立でしか出来ないよ」

「十分出来るからそれでいいじゃない」

 二人のほのぼのとした会話についていけない。こればっかりは学年の問題である。

「午後は組体操だよねー」

「あのチームどうなっちゃうんだろうねぇ」

「心配だよね、あのチーム。森近(もりちか)さんの足引っ張りすぎよ」

 ふいに五年生の中からそんな声が漏れた。

 加奈もその言葉を読み取ったのか、遥と目配せ。

「森近さんも大変だね」

 森近という言葉に耳を疑う。

 森近とは俺のクラスにいる、奈波の親友のことだろうか? 確か一歳年が違うらしいが…。

「森近さんって、誰?」

「あぁ、森近さんはね、学年一と言っていいほどの運動不足の子と組体操の二人技のチームを組んでるの。」

 本名は(ゆい)。森近唯さんはすっごく優しい子で、ショートカットの似合う可愛い先輩である。

 組体操の二人技で組む子は佐藤椿(さとうつばき)。アイドルにいそうな名前をしているのにすっごく太っている。

「椿さん、太ってるのをいつもお菓子買ってくる両親のせいだって、言っている女の子なんだ。何でもかんでも人のせいにしちゃう子。正直僕でもうんざりしてるんだ」

 加奈は遥に同意を求めるように遥の顔を見た。

「想太には言うけど、倒立が出来ないのを、唯さんが私に合わせてくれないからとか、人間起こしも人任せにして、一回事故になったんだよ、私達のクラス」

「あれはひどかったよ。人間起こしで上に乗る人が重すぎるからっていう理由で休むとかひどすぎるよ。あの子はどっからどう見ても痩せてる、僕好みなのに…」

 おお、遥はこういうところは見逃さない。俺は断言する。こいつは女たらしだ。

「遥君は、五―二最強の女たらしよね」

 加奈も同じことを思ったらしく、ニヤニヤした顔で遥を見つめた。

「でも、流石に壁倒立が出来ないのも人のせいにしちゃあねぇ」

「だよね」

「唯さんは一生懸命練習に誘ったのに、椿さん何て言ったと思う? 「合わせらんない奴と一緒に練習出来ない!」ですってよ! それ聞いたときビックリしすぎて腰が抜けるかと思ったよ。椿さん意欲ねぇなぁって!」

 加奈は談笑する。

 そのあと席に着く。


 やがていくつかの種目が終わり、ソーラン節の出番が来た。

 ソーラン節はニシン漁の歌だそうで、あとは解説するのめんどくさいわ。

 俺達は何故か退場門から入場した。

「!!」

 何と加奈が太鼓のばちを持っていたのだ。

 まさか加奈が太鼓をバチバチ叩くというのか。

 

 俺達はなるこを自分の指定された場所に置いて、ジャニーズのダンスを一分間ぐらい踊り、すぐさまソーラン節の位置に移る。

「かまえ!」

 加奈は普段から想像のつかない大声を出して叫んだ。


 加奈の太鼓の音が校庭に響き渡る。

 音楽が鳴り、校庭にはなるこの音が鳴る。

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