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小学生の恋物語。  作者: けふまろ
運動会とライバル
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運動会の朝、加奈達は…

 いよいよこの日が来てしまった。

 運動会当日。

 五六年の係児童は七時二十五分に学校に集合だ。去年の寒い日に行った浅草見学のときよりかは遅い時間に集合したけど、やっぱり寒いのはまた事実。

 ちなみに作者の運動会の時はすっごい晴れてて暑かったそうだ。こっちは寒いのなんのって。早朝は随分寒いと言うけれど、まさかここまで寒いとは。

「まず、会場係の皆は椅子の準備を始めちゃってください」

 今日、すなわち運動会当日は一年から四年は八時半に登校することになっている。想太は親子と来るそうだが、果たしてどんなクズ親か…。

 私は遥君の家にかかってきた親馬鹿電話のことを思い出した。

 親が想太のことを小さい頃からずっとかまってきたからあんな生意気になっちゃうんだよ。

 私が想太のことを思い出しながら苦笑していると、遠くで遥君の声がした。

「そこに入場門を置いて、この近くに大玉転がしに使用するボールを…。で、入場門の隣には赤組の六年生の椅子を置くから、六年生の赤組を教えてくれない?」

 遥君は五年生ながらも六年生に指示を出している。転校してきてから一ヶ月しかたってないのにもうこの学校を取り仕切る人になってしまって、その爽やかさには先生も頭が上がらない。

「遥君、すごいね」

 私が遥君の横に行ってそう言った。

「そんなことないよ。だって僕頭をちょっと使ってるだけだもん。それと、あのね…」

 遥君は私の耳に口を近付けてこう言った。

「旅行に行くときの場所はキャンプのコテージにしておいたから」

「キャンプ…って、まさかバーベキューとかキャンプファイヤー?」

「そうだよ」

「えぇぇえぇぇぇぇえぇ!」

 私はあまりのことで飛び跳ねてしまいそうになった。

「おーい、加奈、遥! イチャイチャしてねぇで仕事しろ!」

 男子の呼びかけ。

「イチャイチャしてねぇよバーカ!」

 私はそう言って一年一組から椅子を取ろうとした。

 会場係が全学年の全ての椅子を持って来いだとよ、世の中不公平極まりない。

 会場係はすっごく大変な仕事だ。

 赤組白組別、そして学年別に椅子を置かなきゃならないし、椅子を置く為の場所取りもしなければならないし。

 更に更にはプログラムに応じて対応していかなきゃいけない。

 私は中学年リレー、四年生のソーラン節を担当することになっているが、はたまたどういうことをするのかすらも分からない状態だった。

 ソーラン節は去年私達がやったから大体のことは分かるはずだ。

 が。

 今年はなるこを使った随分楽そうなものである。それを私達に使わせろや。

「加奈さん」

「ん?」

 今年の四年に嫌悪感を抱きながらも、尋ねてきた男子に優しく返事する。

「遥君と恋人同士なのかい?」

「ふぁっ!? 何言ってるの神田君!」

 神田君は遥君が来るまでモテモテ男子だった。バレンタインでは学年の一、二を争うほどモテていた。まぁ私はそのときから想太にべったりだったけど。

「僕のお姉ちゃんが遥君にベッタリなんだ。遥君、イケメンじゃない? だからかな」

「ふぅん」

 私は興味なさそうにそう言ってから、すぐさま椅子を運ぶ作業に取り掛かった。

 辺りには、朝の寒気に押されながらも準備をしている同級生。

 そんな寒い日に行われる運動会に多分皆はうんざりしているであろう。

 そして、この元気な声にも。

『今日は、待ちに待った、運動会です!』

 何でか一年生が練習しているではないか!

 運動会は楽しみっていうのはすごく分かる。でもしょっぱながら大声出さないでよ…。

 ほら、あちこちから待ってねぇし、っていう声がするじゃん…。って、まぁこれは仕方ないことなんだけど…。

『今日に向けて、僕達、私達は、一生懸命練習してきました』

『私は玉入れでボールをゴールに沢山入れたいです』

 そこは私としては、『ボールを相手のゴールにシュウーーーーッ! 超エキサイティン!』って言ってほしかった。ってそういうところは小学一年生は知らないか…。

『僕は五十メートル走で一位を取りたいです』

 うん、ここはまともだ。でも一年生って絶対へとへとになるよね。

 私は一年生にツッコミを入れながら、次は四年一組、想太のクラスの椅子に取り掛かろうとしているところだった。

 想太の椅子は運良く残っていたので、持っていこうとする。今年は同じ白組なので隣り合わせにしようかなぁ。(加奈は五年二組なので隣同士はまず有り得ないということを加奈は知りません。というかそんな事実を認めようともしません)

 しかしそのとき、小1とはまた異なる大声が校庭を包み込んだ。

『次は、一年生による、玉入れです!!』

 司会進行係の声だ。今年は5ー2から滅茶苦茶声が出る奴が立候補しているからうるさくなること間違いない。

 しかも今の声こそが5ー2一うるさい萩尾(はぎお)だったに違いない。

 あぁほらもう皆びっくりしてるじゃない。

「何だよ萩尾うるせぇなぁ。司会はそんなに感情をあらわにしない方がいいって言ったのに、あの野郎」

「萩尾君うるさーい」

 男子と女子の非難。

 私はそっと溜息をつきながら四年の席に想太の椅子を運んだ。


 私達が椅子を全て運び終えたときには、辺りに組体操をやり終えたような雰囲気が広がっていた。

 ホント、会場係というのは大変である。

 気付くと、八時二十五分で、もう登校している人がチラチラ見え始めていた。

「あ、加奈ー!」

 水筒の中の麦茶(氷入り)を飲んでいるとき、想太の声がした。

「おぉ、来たか、想太!」

「来たよ! 今日はついに運動会だね!」

「本当に朝からすっげー大変だったんだぜ。会場係は全校生徒の椅子を持ってかなきゃいけないし、開始直前から腰痛いわー」

「本当に!? 五六年ってすごい大変なんだね。俺も来年、加奈達と一緒に頑張るから!」

 想太は私を見てニッコリ笑った。

 朝っぱらから想太の笑顔を見れて、私は世界一の幸せ者だ。


 さぁ、いよいよ、運動会が始まる。

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