想太の決意
「遥先輩と加奈お姉ちゃん、どこ行っちゃったんだろうね」
「行方不明なんて聞いてないぜ…」
俺と莉以は遥と加奈を探していた。美咲さんも紗枝さんも別ルートで二人を探している。残る里穂、心愛、徹、直哉はお屋敷で待機してもらっている。
俺が身長の低い莉以と一緒に歩いていると、ふと視界の隅に大手ハンバーガー店のマクドナルドが見えた。
「お、そうだ。マックで休むか?」
俺がマックを指差すと、莉以君は「いいよ想太君!」とニッコリ笑顔で頷いた。
マックの中は寒いとも暑いとも言えない微妙な温度だった。
まぁ今日の天気は曇りだし運動会の一週間前ということだけあって、結構寒い日だった。
俺は四年でソーラン節。こんなクソ寒いのに半袖でめっちゃ動くとか殺す気かよ教育委員会。
まぁそれはいいとして。
俺はマックでチーズハンバーガーとポテトとシェイクを選んだ。ハッピーセットは親に子供だけでマック行ったってバレるから無理。
莉以君もチーズハンバーガーとポテトとシェイクとハッピーセット。俺とほぼ同じだ。
「あー、ちょっと質問いい? 想太君。」
「ん? 何でもどうぞ」そう言ってシェイクを飲む俺。
莉以君はポテトの油がついた指をハンカチでそっと拭いて、尋ねた。
「ずばり、加奈お姉ちゃんと想太君は両想いなの?」
「ぶばーーーーーーっ! ば、馬鹿っ、何を! びっくりしたじゃないか!」
思いっきりシェイクを吹き出してしまい、莉以を叱った。
「だって、僕、あの馬鹿姉から聞いたんですよ。そのこと」
「馬鹿姉…美咲さんのこと?」
「あぁもう、さん付けせずに、是非、是非呼び捨てで呼んでください」
「あ、あぁ。で、美咲さんからそのことを?」
「うん。何ていうか、加奈お姉ちゃんが誘拐されたときに、想太君が告白して、それで両想いだって噂が」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は悲鳴をあげて机に突っ伏した。死にたい。あれは二度と思い出したくない。
「大丈夫? でもよかったじゃない。好きな人と両想いだったんでしょ」
「で、でも」
「どうしたの?」
「遥が加奈のこと好きだって言ってたし…。人の心って変わるもんじゃん? だからもしかしたら加奈は遥のことを好きになっているかも…」
俺は寂しく笑った。
俺はチラッと莉以君を見た。
すると。
バチィィィッッッッッッッッ!
平手打ちの音が店内に響く。
周りに座っている客はその音に驚きこちらを見る。
「え、莉以君?」
「ふざけんなよ…」
「莉以君?」
「ふざけんじゃねぇよ!」
「!!」
莉以君が怒った。
「可能性を信じろよ! そこで諦めちゃ駄目だよ! そんなこと言ってたら本気で手遅れになっちゃうだろ!?」
「莉以君…」
「可能性を信じなきゃ、もしも、もしもってずっと唸っていたら、もう手遅れになるのかもしれませんよ!?」
確かに、その言葉には説得力があった。莉以君が切実に加奈を想っていることが、分かる。
「でもやっぱり、遥の権力には敵わないよ」
「そういうこと言ってるから、加奈お姉ちゃんは遥先輩の手を握ることになるのですよ!」
「…」
俯いてしまった俺に、莉以君は手を差し伸べてくれた。
「頑張ってくださいよ、絶対に可能性を諦めないでください。そして、絶対に加奈お姉ちゃんと付き合ってください」
「でも莉以君も加奈一筋なんじゃ…」
「僕だってまだ諦めたわけじゃないさ」
「え…?」
莉以君の男前な言葉に、俺は顔を上げた。
「いつか絶対に想太君を追い越してみせます」
「莉以…」
莉以の熱い想いに、胸が撃たれる。
そうだよな、そうだよな…。
莉以だって可能性を諦めたわけじゃないよな。
「行こう、莉以」
「そうですね、行きましょう!」
そう言って二人はマックを出て行った。
ソーラン節って楽しいよね。




