想太のライバル美少年登場!?
彼女の嘘はあからさまになった。
それはおおよそ一分前のことだった。
「ふーん。じゃあ、僕と対戦してみる?」
沢山のファンに英雄扱いされている裕香を現実に引き戻す言葉を放つ人が俺の背後に立っていた。
「!?」
それは眼鏡をかけたカッコいい少年だった。
「誰よ? このヘヴィプレイヤーに何か用?」
何でお前調子乗ってんだよ。
「ホントにヘヴィプレイヤーなわけ? …あ、申し遅れたね、僕は立花遥っていうんだ。僕は超有名ヘヴィプレイヤー三人組の大ファンで、日々努力を積み重ねてきたんだ。僕は今は腕前がいくらか上がった。ってまぁそんなこと関係ないか。僕が言いたいのはね? 一週間で最終ラインナップまで行くのは無理だってこと。もしも行けたんなら僕と対戦しない?」
眼鏡から見える綺麗な瞳に見つめられ、裕香は頬を一瞬だけ赤くさせた。
「…な、何よ、いいわよ、勝負して見せましょう?」
強敵の登場で完全に怯えてしまった裕香は大急ぎでパソコンの前の椅子に座る。
「やめるなら今のうちだよ? やる?」
遥君は、裕香を優しい目で見つめる。髪がサラサラと流れて、僕が知っている眼鏡美少年のイメージとは少しかけ離れているものだった。
「! …い、いいわよ、こんな弱い奴に時間使ってる暇なんてないけど、仕方なくよっ! 仕方なく!」
「本当は勝てないこと分かってる癖に、よく言うね」
この子、挑発的だなぁ。
「うるさぁぁぁぁぁい! とにかく勝負よ!」
裕香は挑発に乗っかりすぎ。将来詐欺に会ってもおかしくない。
「いいよ? やってやろうじゃないか」
そんなことがあって今に至る。
遥君はものの見事に圧勝。五万点の差を見せ付けて、「今後そんなつまらない嘘は付かないように。」と華麗に去る。
ところだった。
「すごぉぉぉぉぉい! 遥君? っていうんだよね? ええええ、カッコいいカッコいい!」
加奈が大喜びで遥君の所に立ち寄った。
「すごい! すごいよ! 今のプレイさえっちもミサちんも見た? 超カッコよかったよね!」
他の二人はブンブンと首を縦に振った。
「あ、あのののののののの! もしかして、あの三人組ですか?」
遥君は自分に迫ってくる三人組に頬を赤くした。
「そうだよ? っていうか超イケメン…」
「マジであの三人組? …夢みたいだ…。我が生涯に一生の悔いなし…。あぁ、お会い出来て光栄です」
遥君はさっきの対戦のえらそうなときとは明らかに違い、憧れの眼差しを三人に向けていた。
でも遥君は加奈にだけ、他の二人とは違う眼差しを向けていた。
何だ…?
「そうだ、私のフレンドコード教えるよ! いつでも遊べるんだよ? 気楽に来てね!」
そう言って加奈は懐からボールペンとメモ帳を取り出し、サラサラと自分のフレンドIDを書いて、書いた部分を破って遥君に渡した。
「ほわぁぁぁぁ…。あ、ありがとうございます! 一生の宝物にします!」
「そうかそうか。また会える日を信じてるよ」
加奈は可愛らしい笑みを浮かべた。
遥君は大切そうにメモ帳の紙片をポケットにしまった。
俺達はパーティが終わると同時に会場のツインタワービルから去った。
だから遥君のつぶやきと計画に気付きもしなかった。
「加奈さんはきっと僕と赤い糸で結ばれているはず…。
だから、加奈さんと同じ学校に行きたい!」
俺は、遥君がそんな願い事を両親に相談しているなんて思いもしなかった。