パーティ会場にまさかのあの人が!
「うわー、本物の三人組だ」
「ファンだから、会えるなんて夢みたいだよ!」
「そんで、隣にいる男の子は何なんだ?」
加奈が引っ張ってきて壇上に上がった俺はほぼ魂が抜けていた。
確かに女の子三人組(熱狂的なファンがいる人達)の中に全く無名な男の子が出てきたら誰だって不思議に思うだろうな。うん。
「ではご挨拶をして頂きます」
「…はい、マイク代わりました、カナです。こちらが友達のミサッチ、サエです。で、隣にいるのが…」
加奈が無言でマイクを渡してきた。え? と俺がそちらを見ると、すでに加奈はニッコリ笑顔になっており、早く自己紹介しろ、と無言で言ってきた。
途端に会場がざわつき始めた。
「え? あの子、誰? あの三人組のプレイに参加したことあるのかしら?」
「違うと思うわ。あの子、まだあの三人組の本気の姿を見たこと無いのよ。そういう顔をしているわ」
「じゃあの子何? 彼氏とか?」
「本当に? 息子が大ファンなのよカナちゃんの」
「彼氏だったらお祝いするわぁ」
なんて声が年配のおばさん達の方からちらほら聞こえる。
いや怖い怖い。もしも告白しましたなんて言ったたらそれこそこの会場に俺はいられなくなるだろう。
「ママママママイク代わりましたたたたたたた! カナ様の知り合いの想太という者です! 最近『恐怖の大都市』始めました! 以後宜しくお願いします!」
カタカタ歯を鳴らしてお辞儀すると、男子学生が集団で固まっている方から、声が聞こえてきた。
「正装してきてる。馬鹿じゃねぇの?」
「あれで誰かの彼氏とかだったらマジでぶっ殺す」
「あんな気取ってる奴にホイホイついてくる馬鹿じゃねぇよ三人は」
加奈は一瞬びくっと肩を揺らしたが、すぐに冷静になってこう喋った。
「今日は、スマホ版『恐怖の大都市』が配布されると聞きまして、私も一ファンとして夏休みの宿題も早々に終え、飛んできました。夏休みの宿題なんてたまったもんじゃないですよね。八月三十一日ってこう子供を苦しめる日数だと分かりました」
加奈がそう言うと会場にいる人は笑った。
「今日私達と一緒にプレイしたい方は、スマホ版のフレンドコードをお教えしますので、ぜひ話しかけてください」
加奈達がステージ壇上から降りると、俺もすぐさま駆け下りた。
パーティ会場では、何十台ものパソコンがあって、そこで一緒にプレイ出来るというものがある。
そこでは一生無い機会だと加奈達の周りに人々が集まってきた。
やがて加奈は「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」と言いながらプレイするようになった。怖いね。
やがて俺はスマホを取り出して、配布場所に向かった。
これでいつでもどこでも『恐怖の大都市』が出来るのだ。
俺がドキドキワクワクしていると、突如ぽんぽんと肩を叩かれた。
「ん? ってうわぁ!」
そこに裕香達がいた。
何かこういう終わり方が定番になってきています。早く済ませたいとき特有のやつです。
もう呆れますよね、はい。新しい終わり方があればいいのに…。