パーティ会場2
俺が会場のツインタワービルについて、通路の所で加奈達を見つけると同時に、三人はほぼ引いたような目で俺を見つめていた。
「おい、スーツ姿って」
「へ? パーティ会場っていうことだからスーツで来たのに、駄目なの?」
「これはパーティっつっても舞踏会とかそういう類のもんじゃねぇんだよ…」
「そうなの?」
「そうなの。っていうか、ゲームやったの?」
「やったよ! すごい楽しかったよね!」
そう。一回母親に土下座してダウンロードしてもらった。
主人公は自分で、顔をカスタマイズ出来る。大都市に引っ越してきた大学生の主人公は、同じマンションに住んでいた隣人の今坂深雪と一緒に大学に行くことになる。
深雪と一緒に登校することになって一週間たったある日、大都市から賑やかさが消えた。
ゴーストタウンと化した大都会で、深雪と生活することになるが、深雪は主人公がある日起床するといなくなっていた。
という感じまで来ている。
クリアするまでには、実に一年ぐらい掛かるらしい。それくらいボリュームがあるのだ。
どちらかといえば、ゴーストタウンに現れるゾンビを倒すシューティングゲームなのだが、数々のゲーム実況者がプレイしていて、いまやホラーゲームとして扱われている。
それなりにホラー要素も多いのだ。ゾンビが画面いっぱいに現れるゲームオーバー画面なんか夢に出てくるほど怖い。
オンラインでは、ストーリー関係なしに、オンラインはオンラインでオンライン用のストーリーがある。
加奈達は、一週間で中盤まで登りつめたプレイヤーで、『恐怖の大都市』のオンラインや、実況者の中では度々名前が飛ぶときもある。
しかもシューティングの腕前も中々のもので、加奈達とオンライン対戦したい人は山ほどいるそうだ。がしかし、加奈たちと俺は一回オンライン対戦したことがあるのだが、フレンドになろうと声かけたところで、黙々とゲームを進める無言の威圧に押され、未だかつて加奈のグループに加入した人物はいない。恐らくこれからも現れないだろう。
だが現実世界の加奈は勉強も駄目駄目で成績もよくない。顔はいいのに、何故これにはまる。
いや、ゲーム内で本領発揮しているだけかもしれない。
彼女は凄い人間である。
『恐怖の大都市』ではファンクラブが設立されている三人グループの一人、加奈。残り二人は紗枝さんと美咲さん。
ゲームの中の名前は「カナ」である。
ファンクラブの中の熱狂的な奴らは、加奈の年齢や学校、住所まで探ろうとしているのだ。
よっぽどのロリコンか警察に捕まりたいただの馬鹿か。
そんな『恐怖の大都市』の中では最強の名が付くであろう三人は、スーツ姿の俺を見て、現在沈黙している。
パーティと聞いていたから正装してきたのだ。正装で来なくていいと言わなかった加奈も加奈だ。
「あー、想太、モデルになれそうなくらい似合ってるけど、これは超豪華版オフ会みたいなもんだからな?」
うん、加奈、褒めてくれてありがとう。でも今は羞恥心でそれどころじゃない。
さっきから俺をチラチラ見て話してくる女性陣がいる。恥ずかしいったらありゃしない。
『まもなく、パーティを開催いたします。A棟の三階にお集まりください』
気まずい沈黙を破るかのようにアナウンスが流れた。
「…行くよ想太。さえっちもミサちんも行くよ!」
加奈が手を引っ張る。
そしてその会話も聞いたすれ違った人達は…。
「ん、今、さえっちって」
「ミサちんとも言っていたわよ」
「あの子達まさか。」
「ってかあのイケメン誰? 彼氏?」
「正装だってさ。可愛い~」
あぁ、見られてる。恥ずかしい。
パーティ会場は大賑わいで、特に俺を連れる最強と崇められている三人組はとても人気で、俺はあっという間に三人と引き離されてしまった。
アナウンスがまた流れた。
『ではカナさん、ミサッチさん、サエさん達、会場にいるならばステージに登場してください』
え?
何がなんだか分からない俺は、何かに引っ張られた。
「加奈!?」
加奈はズンズンとステージに歩いていった。
そして、俺は引っ張れているから、ステージに…。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!