お友達さんは多分いい人です
「ベタな笑いが欲しいなら、吉本新喜劇に行くといい」
そんな!
私は天然の自然な笑いが欲しいのに!
でも、思いっきりしかめている190cm佐藤先輩にそんな事を言う勇気なんか勿論ない。しゅんと項垂れたまま「すみません…」と謝るのが精一杯だった。
「じゃあな」
ああ、190cm佐藤先輩が行ってしまう…!
そう思った時だった。
「まぁまぁまぁ待て待て待て。アッサリ断るの勿体無ぇって!」
立ち去ろうとした190cm佐藤先輩を止めてくれたのは、やっと笑いが収まったお友達さんだった。
お友達さん…!
ありがとうございます!!
「お前今まで強面クールなツラとド天然なキャラとのギャップにドン引きされて、付き合っても一ヶ月もった事ねぇだろ?」
「ほっとけ」
「いやいやだからさ、彼女はお前のツラじゃなく内面に惚れてくれてるんだぞ?お前が何もない所で転んで三回転半くらい前転しようが、バスの急ブレーキに対応できず車両の端から端まで後ろ向きのまま猛ダッシュしようが、さらに言うなら」
「もういいだろ!?」
真っ赤になってお友達さんの口を塞ぐ190cm佐藤先輩。お友達さんは絞め殺しそうな勢いで睨みつけられても、気にも留めていないっぽいけど…。
しかしさすが190cm佐藤先輩、数々の武勇伝をお持ちなんですね…!
「とにかく!多分それくらいの事じゃガッカリされて破局、にはならないと見た」
ガッカリどころかむしろ喜びます。
「…逆に全力で笑われそうだ」
「お前なぁ、笑ってくれるだけマシだろ?そういうシチュで他人の顔されてみろ、マジで凹むくせに」
その言葉に、190cm佐藤先輩は雷に打たれたレベルの衝撃の表情で、棒立ちになった。
「そうかも知れない…」
おお!190cm佐藤先輩が揺らいでいる!
さすがお友達さんはツボを心得ていらっしゃる。心の中でお友達さんを絶賛褒めちぎったというのに、190cm佐藤先輩は僅か数秒で自分を取り戻してしまった。
「いやダメだ、またお前に上手くのせられる所だった。だいたいお前は面白がってるだけだろ」
「当たり前だ。こんな面白い展開逃してたまるか」
あ、なんか私と似た匂いを感じる人だな。
ていうかストレートに本音言わないで!
「ただし!俺はお前のためにならねぇ事は言った事ねぇぞ。いつだって全力でお前の人生を応援している」
ジト目の190cm佐藤先輩をビシリと指差すお友達さん。微妙に説得力に欠けますが…。