委員会、最高!
なっちゃんに分かってもらえなかったのは悲しいが、心の中で誰を想おうが私の勝手だ。私は心密かに190cm佐藤先輩をお慕いする事にした。
190cmの目立つ体躯は、たま~に見かけるだけで私の心をほんのりあったかくしてくれる。カイロよりも安上がりだ。
とはいえ学年も違えば部活も違う。接点なんか皆無なわけで、ただただ見守る事3カ月。進級して2年になった私は、初めて神様に感謝した。
190cm佐藤先輩と、委員会が一緒!!
浮かれる私に、神様はさらに優しかった。なんとも素敵な現場をこの目に焼き付ける事が出来たのだ。
それは花壇整備のためジャージに着替えた時の事。日焼け止めを塗り忘れたのに気づいて教室に戻ったら、何故か190cm佐藤先輩がキョロキョロと床を見回していた。
「どうかしました?」
ここぞとばかりに話しかける。滅多にない機会は有効に使わないともったいない。
「いや、名札をジャージに付けかえたと思ったんだけど…」
「ないんですか?」
「ああ…」
困り果てた顔で、190cm佐藤先輩はついに床に膝をついて机の足の下を覗き込み始める。
その背中に。
名札が…!
「で、またツボったわけね?」
「うん!もう大好き!!波平さんの眼鏡レベル!」
翌日私はまたもなっちゃんに惚気ていた。だってもう素敵過ぎる。
あの後先輩は真っ赤な顔で逃げていき、さらに委員会の締めにはさらなる爆弾を投下してくれたのだ。
「しかもね、『生活環境保全委員会』って言いにくくないか?って言いたいのに、『生活環境保全委員会』が言えなくて、3回も噛んだの!」
「まぁ言いにくいよね」
ああんもう!
図らずも身を以て『言いにくい』を体現してしまうそのセンス!
僅か2回近くにいただけで、こんなに心を鷲掴みにされた事なんてかつてない。なっちゃんは呆れたみたいに「ハイハイ」とか聞き流してるけど、本当に素敵な人なのに…!
それから半年くらいの間、私は月に2回の委員会に舞い上がるような気持ちで参加した。先輩は毎回なにかしでかしてくれる。
落とした物を拾おうと手を伸ばせば胸ポケットからペンが落ちる。ペンを拾って頭を上げればお約束のように机に強打。
なんかベタな笑いの神様でもついてるのかと言いたい。そして私はそんなベタな笑いが大好きなのだ。ああ、先輩の近くにいたら毎日がどんなに楽しいだろう。
でも、あと半年もしたら先輩は卒業してしまうんだよね…。