出会いは衝撃的でした。
出会いはそれはもう衝撃的だった。
部活後の帰り道、すっかり暗くなった道をとぼとぼと歩く私の前方には、剣道の道具を背負った大きな背中が見えていた。
暗い道で同じ学校の制服の人が歩いている事になんとなく安心感を感じながら、大きいな~、190cm近くあるんじゃないかなぁ…なんて、どうでもいい事を考えていた時。
堂々とした歩みのまま、その190cmの大男が……看板にぶつかった。
しかも真正面から。
ガァン!!
という、痛そうな音が暗い夜道に響き渡る。しかも反響付き。
唖然としながら見守っていたら、190cmさんは顔を押さえてうずくまった後、ハッとしたように立ち上がり恥ずかしそうな赤い顔でキョロキョロと辺りを見回した。
バチッと目が合う。
瞬間、さらに真っ赤になった190cmさんはサッと視線を外し、足早に立ち去ってしまった。
その間たぶん30秒ほど。
私が恋に落ちた瞬間だった。
「なっちゃん、どうしよう!恋に落ちた!」
翌朝、この感動を分かち合いたくて、早速私は大親友のなっちゃんに開口一番そう告げた。
「おっ、ついにユミにも春が来たか。で~?誰?どんな人?」
「剣道部の!190cmくらいありそうな人!」
「ああ、佐藤先輩。寡黙で強面だけど、イケメンだもんね」
「イケメン…?」
そうだったのかな。それなりに距離があったから顔の細かい造作はよく分からないな。暗かったし。
「ちょっと待て。一体どこに惚れたわけ?」
なっちゃんが不信感丸出しで詰問してくる。しかし!よくぞ訊いてくれました!
私は昨日の衝撃的な出会いをテンション高く報告する。
「いやぁもう堪えきれなくて!私久々に真っ暗な路上で周りも気にせず大爆笑したよ!」
「……うん?恋に落ちた話だよね?」
「いやだって落ちるでしょー!私の微妙な笑いのツボにあんなにビンゴする事そうそうないよ!?」
鼻息を荒くする私に、なぜかなっちゃんは疲れたようにこう告げた。
「ユミ…それ多分、恋じゃない」
なんでだ。