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自我を持たせてはいけない。

効率面しか見ていなかった人類がそれに気付いたのは、世界中から『自然』が消え去った後だった。


「助けてください。人類を、世界を」


大地や木々を塗り潰して『自然』をしっかりと舗装した後、次に狙われたのは『生物』で。


「お断る」


灰色の化け物への対抗手段は、ただ一つ。

世界で唯一自然が生き続ける森に暮らす、不可思議な少女の力だけが頼りだった。


「世界とか人類とか、そんな重いモノ背負いたくない」


正直、駄目なのは分かっていた。

今まで世界が彼女にしてきた理不尽な仕打ちを考えれば、快く引き受けてくれる訳がないことくらい。



不気味な力だと、恐れ、嫌い、世界の隅っこに追いやった。

消せる筈のない愚かな過去が、最後の希望を吹き消そうと……。


「散歩って事なら、別に良いけど」


頭を抱える僕とは対照的。

気の抜けたトーンでそんな事を言いながら、いつの間にか少女は出掛ける準備を始めていた。


「あ、え」


鼻歌混じりに彼女が開けたクローゼットには、真新しいふりふりの洋服たち。

可愛らしい靴。

帽子に、ベルトに。


「散歩、お出掛け、ピクニック。世界を救う旅以外だったら、呼び方は何でも良いから」


がさがさとそれらを漁る横顔は、普通の女の子そのもので。


「お兄さんが望むなら、デートでも良いよ?」


クローゼットの前が、あっと言う間に色とりどりの花畑になっていた。


『歩いたところにあらゆる法則を無視して花が咲く』


それがあの日僕を魅了した彼女の奇跡。

世界中が不気味だと罵った、彼女の奇跡。


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