第5話 宿屋
アレン達3人は、真っ青になった酒場の主の前で正座している。
「お前らどうするんだよ。酒場めちゃくちゃじゃないか、弁償できるのか」
アレン達が気づいた時には、あれだけ騒いでいた男達はいなくなっていた。
「いやしかし、親父さんも一緒に暴れてたような気もするのですが」
チュータを頭にのせたアリスが少し抗議するが
「お前らこの惨状を見てもそんな事を言うのか、その扉もこのカウンターも、そこのガキがやったんだよ」
「えっ、俺、俺なの」
そう言ってアレンが周りを見渡すと、入口の扉は破壊されてカウンターは跡形も無い無惨な状態になり、床は所々めくりあがり、天井は何故か大きく穴があいている。
「うーん、俺だな。確かに俺がやった覚えがある。ははは」
アレンが笑いながら言ったら、
「ぎゃははは、アレン君ちょっとやりすぎだよ。ぎゃははは」
マリアも周りを見渡して笑いだした。
「ちょっと、笑ってる場合じゃないでしょ。どうするのよ」
二人を見ていたアリスが怒りだした。
「チュチュ、チュー!」
なぜかチュータまで
「ふざけるな! お前らは警衛隊に引き渡してやる」
酒場の主は真っ青だった顔を、今度は真っ赤にして怒鳴りだす。
「「「ひぇー、それだけはご勘弁を」」」
アレン達3人は、額を床に擦り付けて謝った。
***
で、何故か宿屋を手伝っていた。
酒場の主人に謝って警衞隊に引き渡すのは勘弁してもらったが、酒場の修理費用はアレン達が出す事になった。
しかし3人のお金では足りず、宿屋で働きながらお金を稼ぐ事になったのだ。
「なんでー! なぜこうなるの」
アレンが叫ぶ。
「全部アレンの所為でしょう。どうするのよ、私たちまで巻き込んで」
アリスがまだ怒っていた。
「チューチュー!」
アリスの頭の上でチュータまで、
「チュータ、なぜお前はそっち側なんだよ」
アレンが文句を言っていたら、
「まぁまぁ、いいじゃない。楽しかったし、ははは」
マリアは笑ってる。
「ほら、お前ら喋ってないで、さっさと運べ!」
グレンさんが怒鳴った。
グレンさんはここの主人で、奥さんと二人で酒場と宿屋を切り盛りしていた。
酒場は大工が修理中で使えなくなったので、宿泊客の部屋までアレン達が食事を運んでいる。
3日ほど宿の掃除や洗濯などを手伝っていると、少しは信用されたのかやっと外出ができるようになった。
それまでは外出もさせてもらえなかった。
アレン達が逃げると思われていたようだ。
そして朝の忙しい時間が過ぎると、今日は外出する事になった。
宿にひとりは残らないと駄目みたいなので、アリスが残りマリアは仕事を探しにギルドに、エドさんの護衛もギルドで受けていた。
そしてアレンは神殿に行く事にした。
「俺はちょっと神殿に行ってくるから」
アレンが言うと、
「まさか逃げたりしないでしょうね。アレンが帰ってくるまでチュータは預かってるわ」
アリスがチュータを頭に乗せて嬉しそうにして答えた。
「う〜ん、それは単にチュータと遊びたいだけじゃないの」
アレンが返事をしながら、まぁ、チュータもアリスが気に入ってるようだし、いいかと思っていると、
「神殿に行くなら気をつけてね」
アリスが真面目な顔をして言うとマリアも
「王都の神殿は、あまりいい噂を聞かないからねぇ」
眉をしかめて言った。
「えっ、そうなの。でもちょっと覗くだけだから大丈夫だよ」
アレンは不安そうに見ている二人に適当に頷き、教えてもらった神殿の場所に向かって歩きだした。
神殿は王都の中央にある王城の近くにあり、王城ほど大きくないが、白亜の荘厳な石造りの建物だった。
アレンが中に入ろうとすると、
「おいおい、ぼうず。中に入るにはお布施が銀貨1枚いるぞ」
入口の横に立つふたりの警備兵のひとりが言った。
「えっ、お金がいるの」
アレンが驚いていると、後ろから頭に犬耳を生やした女の人が、赤子を抱いて駆けよってきた。
「お願いです。この子に聖水を、昨日から熱が下がらずこのままでは」
女の人が泣き出しそうな顔をして、警備兵にすがりついた。
「汚ならしい亜人がさわるな!」
警備兵が怒鳴りながら女の人を突き飛ばすと、
「聖水はコップ一杯、金貨一枚する貴重なものだ。お前に払えるのか、それにお前ら亜人に渡すわけないだろうが」
持っていた槍を突きだし怒りだした。
アレンが女の人に駆け寄ると、赤子を庇った為か女の人は足を挫いていた。
そして赤子は衰弱している所為なのか、今の騒ぎにも泣こうともしない。
「お前らなにするんだよ! 危ないだろう」
アレンが警備兵に振り向き怒鳴ると、
「ふん、お前も金を持ってないのだろう。此所は神聖な神殿の前だ。その汚ならしい亜人を連れて早くどこかに行け」
と警備兵は怒鳴り返して持ってる槍を構えた。
「なんだよそれ、此所はエキドナ姉ちゃんの神殿だろ。こんな事あの姉ちゃんが許すわけないだろう!」
アレンが怒って腰の神剣で槍の穂先を切り飛ばすと、その斬撃は半透明の刃となり飛んでいき、神殿の一部を切り飛ばた。
そして更に、王城の尖塔の上部を破壊して、見えなくなるまで空に飛んでいった。
「えーと、なにこれ。ヘイトス兄ちゃん、やりすぎだよ。危なくて使えないよ。この剣も封印だよー!」
アレンが驚き叫んだ。
そして皆が呆然となり、刃が飛んでいった方を見詰めていた。
書き溜めてた原稿がなくなったのでこの先は不定期となります。
もうひとつ連載をしているためです。すいません。
基本は朝の9時に投稿を考えてます。
もうひとつの連載、異界の魔神は土曜日の夜9時に2章を再開しようと思ってますので、まだ読んでない方はよろしければお読みください。
ツヨシとゆかいな仲間が活躍する話です。
初作品でプロローグの辺りが少し重たいですがよろしくお願いします。
それではまた