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第4話 王都


 アレン達が王都に到着すると、エドさんのお蔭か外壁の門をすんなりと通してもらえた。


 エドさんとは門を潜った所で別れ、その際に少しだがアレンにお礼の意味もあって、お金を渡そうとした。


「別にいいよ。ここまで乗せてもらっただけで十分だよ」

 そう言って断るアレンにエドさんが、無理矢理お金を渡して去り際に、

「今回の襲撃事件は、私の方から商業ギルドを通して話をしておきます」

 そう言うと更に、

「今は王国も、継承問題で揺れている時です。私達が軍に報告しても、まずは動かないでしょうけど。」

 エドさんは顔を顰めて言うと、去っていった。


 そして彼女らも、王都に着くまでが契約だったようで、エドさんとは別れて何故か、アレンと一緒に歩いている。


「えーと、何で付いてくるの」

 アレンが不思議そうにに問いかけると、

「えっ、何でって何故かな。えーとそうね、アレン君と一緒だとおもしろそうだから。ははは」

 マリアは大口をあけて笑っているが、アリスは顔をしかめて不満そうにしていた。


「それで、アレン君はどこに行くのかな」

 マリアが笑いながら問いかけた。


「うーん、とりあえずは神殿かな、後はそれからだな」

 アレンが憮然として答える。


「あらっ、駄目よ。もう夜だから神殿は、今の時間だと閉まっているわよ」

 マリアがそう言って返すと、その横でアリスが頷く。


「えっ、そうなの。えーと、それだと神殿は明日の朝か。この後どうしようかな」

 アレンがそう言って考え込む。


「それなら先に宿を見つけて、ご飯でもたべようよ」

 マリアがそう言って、強引にアレンの腕を引っ張っていると、


「チューチュー、キュー?」

 アレンの髪の中からチュータが顔を出した。


「おー、こ、これは」

 アリスが突然、目を大きくあけて頬を紅潮させ、大声をあげた。


「あーははは、アリスは小動物に目がないからね。それにしても小さいネズミだね。親指ぐらいの大きさしかないよ。ははは」

 マリアがチュータを見て笑いながら言った。


「チュータ、お前は飯の話をしたから起き出してきたのか」


「あっ、こいつの名前はチュータ。俺の弟みたいなものだ」

 アレンが気づいたようにチュータの紹介をしていると、おーうーと変な声を出して、アリスが手を伸ばしてくる。


 チュータがアリスの伸ばした腕を伝って、アリスの頭の上や肩の上をチューチュー鳴きながら駆け回る。


 するとアリスは、目をトロンとさせ口を半開きにし、恍惚とした顔をしてチュータを捕まえようと両手で追い回す。


「ぎゃははは、アリス、あんたヤバイ顔してるよ。こんな道の真ん中でその顔は、ぎゃははは」

 マリアがアリスを指差し、はらをかかえて大笑いしていた。


 王都の大通りの真ん中で、恍惚とした顔でネズミを追い回す女と、それを指差し大笑いする女は、道行く人々の注目を集めていた。


 アレンは、俺は関係ない人のふりをしようと思うのだった。


    ***


 アレン達は、大通りから一本ずれた裏通りにある安宿に宿泊することにした。アレンも彼女らも、そんなにお金を持ってなく安宿にしたのだ。


 そこは1階が酒場になっており、食事も提供しているようなので、そこで食事をとる事にした。


 アレン達が食事をしていると、後から入ってきた柄の悪そうな若い男達が、にやけながら近寄ってきた。


「おー、お前らはさっき大通りで、恥ずかしい事してたやつらだろ。ひゃははは」

 頬にきずのある男が笑いながら言うと、アリスを指差して更に言い募る。

「この女は大通りの真ん中で欲情してたんじゃねーの。ひゃははは、こんなガキじゃなく俺が相手しようか。ひゃははは」


「なっ、なっ、なにを言ってる、ばっ馬鹿なこと言うな」

 アリスが激昂して立ち上がると、男はアリスに手を伸ばして、

「ひゃははは、その気になったか、ひゃは、うぉっ、いてっ、ぎゃー」

 アリスの頭の上にいたチュータが、男の腕に噛みついた。


「なんだい、あんたらは私らにケンカ売ってるのかい、ならそのケンカを買わせてもらうよ」

 マリアも立ち上がりながらそう言って、グラスにはいっていた水を男達にぶちまけると、怯んだ男達を殴りつける。


 殴られた男が隣のテーブルをひっくり返すと、隣で飲んでいた男達も

「お前らは俺達にケンカを売るきかよ」

 最初の男達に殴りかかり、アリスがチュータに噛みつかれた男を蹴り飛ばすと、カウンターで飲んでいた男達に派手にぶつかり、その男達も……。


 酒場の中は修羅場となり、中にいた男達全員を巻き込む大乱闘となった。


「えっ、なに、なにどうなってるの」

 アレンが呆然と眺めて呟いていると、男が殴りかかってきた。


「なにひとりだけ関係ない顔してるんだよ」

 怒鳴りながら殴りかかる男をアレンは、咄嗟にかわして逆に男の腕を掴んで投げ飛ばす。

 投げられた男は、酒場の入口のドアを破壊して、外まで飛んでいった。


「ぎゃははは、祭りだよ楽しいね。ほらアレン君も、ぼうとしないで、ケンカ祭りに参加しな。ぎゃははは」

 大笑いしながらマリアはアレンを、酒場の中央に押しやった。


「えー、これが地上界の祭りなの」

 アレンは首を振り、殴りあいに手加減をしつつも参加した。



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