表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/23

第3話 襲撃


 アレン達が乗った馬車を、賊が騎乗した土竜達が追いかけてくる。


 アレンが荷台から追って来る土竜を眺めると、土竜は人の3倍ほどの大きさもあり、固い鱗に覆われたトカゲを大きくしたような生き物に見えた。

 前屈みの二足歩行で走る姿は、馬の数倍は速そうだ。それに、性格も狂暴そうに見える。


 馬車の数倍はありそうな速さで、土竜はたちまち追いついてくる。

 御者台から荷台に移ってきたマリアが、弓で矢を続けざまに放つが、土竜に当たる矢は鱗にはじかれ、賊に飛んでいく矢は盾で防がれていた。


「あいつらただの賊じゃない。土竜に乗ってるところを見ると、奴隷商人の人狩り部隊のようだわ。これはまずいわねぇ」

 マリアが顔をしかめて呟くと、アリスに向かって

「アリス! もっと速く走れないの」

 マリアが御者台に向かって怒鳴る。


「これで精一杯だわ。もともと土竜に速さで勝てるはずがないわよ」

 アリスも怒鳴り返していた。


「うー、迎え撃つにしても、土竜に乗った賊20騎……難しいわね。荒れ地の真ん中じゃ逃げるとこもないし」

 唸るようにマリアは呟く。


 とうとう、先頭を走る土竜が追いつき乗っていた賊が叫ぶ。

「うっひょー、若い女と子供が乗ってるぜ。こいつは金になりそうだ。ひゃっはははー」


「ここは俺が出るしかないでしょ。マリアさん、俺がやっつけてくるよ」

 アレンはマリアにひと声かけると、荷台から飛び出した。


「ちょっ、ちょっとアレン君、なに言ってるの。えっ、うそー」

 マリアが驚きの声を上げるが、アレンはマリアの驚く声を背後に聞きながら、目の前に迫る土竜の顔に飛び蹴りをくらわす。

「おりゃー、俺様、アレン様登場!」


 飛び蹴りをくらった土竜は、後ろに続く土竜を3匹ほどまきこんで、遥か遠くまで飛んで行く。


「ありゃ、力を入れすぎたかな」

 アレンは見えなくなるまで飛んでいく土竜を眺めて言った。


 そして、横を通りすぎようとした土竜の尻尾を掴まえて振り回すと、次々と土竜達をぶっ飛ばして雄叫びをあげる。

「おりゃ、おりゃ、オリャー!」


「なっ、なんだこのガキは、うっ、うわー」

 そして、乗っていた賊達もまとめてぶっ飛ばしていく。


「ひぃー、このガキばけもんだー! うっ、うひゃー」

 土竜も賊達も、大混乱となっていた。


「に、にげろー!」

 10匹以上の土竜を倒すと、残りの賊達は逃げて行った。


 少し離れた所で馬車を止めて見ていた3人は、口をあんぐりと開けて、体を硬直させたようにかたまっていた。


「あれっ、皆さんどうしたのかな。ははは」

 アレンが笑いながら近づくと、エドさんは腰をぬかして座りこみ、アリスはこれは夢だと呟き続けて、マリアだけがなにこれと大笑いしていた。


    ***


 あれからエドさんとアリスをマリアが宥めて、馬車を王都に向けて走らせることにした。


 荷台の中ではまだエドさんが呆然として、御者台ではアリスがぶつぶつ言いながら馬車を走らせている。


 そして荷台の中では、アレンとマリアが向かい合って座り、話し込んでいた。


「えー! アレン君は天上界から来たって言うのー。何それ、冗談きついよ〜、ははは」

 アレンがこれまでの経緯を話すと、マリアが笑いながら言う。


「本当の事だってば。俺は今日、神界から地上界に降りてきたばかりだから」

 アレンは真面目な顔して言うが、

「ぎゃははは、なにそれ、アレン君はもしかして神様。ははは、そんな事あるわけないか、ぎゃははは」

 マリアは大口を開けて大笑いしていた。


「マリア、笑いすぎ。それに俺はまだ半分だけだから」

 アレンが少しムッとして答えると、

「でも冗談にしても、アリスの前で言ったら駄目よ。アリスはエルフだからね、アマゼウス様の信者なのよ」

 マリアは眉を寄せ急に真面目な顔になり、チラッと御者台の方に目を向けて小声で言った。


「アマゼウス様って、俺の母ちゃんだよ」

 アレンが得意気に言うと、またマリアは腹をかかえて大笑いした。

「ぎゃははは、アマゼウス様の事を母ちゃんって、母ちゃんはないでしょ。ははは、それじゃあ、エキドナ様は姉ちゃんだとでも、ぎゃははは」

「よくわかったな」

 アレンが頷くと、

「ひぃー、本当に面白い子ね。ははは、でも王都では禁句よ。あそこはエキドナ様の信者ばかりだから」

 最後にはマリアが呆れたように言った。


「ちぇっ、本当なのに」

 そう呟いてアレンが外を眺めると、日が落ちかけてもうすぐ夜になりそうだった。



「王都が見えて来たわよー!」

 アリスのほっとした声が、前から聞こえて来た。


 アレンが荷台から御者台に顔を出して前方を見ると、中央に城が建つ大きな街が見えた。


 そして、馬車は外壁の門が夜になって閉まるぎりぎりに、門の中にすべりこんだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ