ブロローグ
俺は今日が16歳の誕生日だ。
そしてこの神界バルハラから旅立つ。
俺は本来、別の世界で誕生する筈が、どういう訳かバルハラに生まれ落ちてきた。
そして俺を今まで拾い育てたのが、バルハラの最高神にして大地の女神アマゼウスだ。
まぁ、俺のかあちゃんみたいなものだ。
でも、実際におぶったりあやしたりしたのは、一番上の姉ちゃんの慈愛の女神エキドナだけどね。
俺はこの神界の神気をミルクがわりに育ったが、体が成長するのにもう限界らしい。元々別の世界の体だから、このままでは俺の体はおかしくなるらしい。
そこで地上界アズガルドに行って人間達の信仰を集めれば、また神界に帰ってくる事が出来るらしいので、俺は地上界に行くことにした。
そして今は、緑溢れる森の中にある池の前に立っている。周りには見送りにきた母ちゃんや、たくさんの兄弟達に見守られて。
「うぅ〜、アレンがいなくなると寂しくなるわ。体には気をつけるのよ」
母ちゃんが泣きながら言ってくる。
「俺の体の半分は、神気で出来てるから大丈夫だよ。ははは」
俺が笑いながら答えると、他の兄や姉達も笑いながら声をかけてくる。
「アレンが行くと遊び相手がいなくなるから早く帰って来いよ」
と俺の頭を笑いながら小突いてくるのは、一番上の兄の戦いの神ギルアスだ。
いつも闘いの相手をさせられる、少し脳筋のウザイ兄ちゃんだ。
「うふふ、アレンちゃんが地上界で、どんな恋をするのか楽しみだわ」
と微笑みながら言ってくるのは二番目の姉、恋愛の神セレスだ。
まさかと思うけど、地上界の俺を覗き見するきじゃないだろうな。
絶対にやめろよな。
「……」
と無言でポンポンと二度、手のひらで俺の頭を軽くたたき撫でるのは、いつも優しい二番目の兄ちゃん、鍛冶の神ヘイトスだ。
ヘイトス兄ちゃんが、俺に何か細長い袋に包まれた物を渡してくる。
「なにこれ、俺にくれるの」
ヘイトス兄ちゃんが無言で頷く。どうやら俺への餞別みたいです。
袋を開けるとひと振りの剣が出てきた。
これは神剣ですね。
この剣はヘイトス兄ちゃんが打った正真正銘、本当の神剣ですよ。いいのかな。
俺はヘイトス兄ちゃんにお礼を言って、ありがたくいただきました。
ほかの姉や兄達、商いの神や医の神など皆が笑いながら見送ってくれる。母ちゃんだけはまだ泣いてるけどね。
それとエキドナ姉ちゃんは、今は地上界で大人気らしくて、忙しくて見送りにこれなかったみたい。
エキドナ姉ちゃんに一番、見送ってもらいたかったけど仕方ないよね。
「じゃあ皆、行ってくるから母ちゃんもいつまで泣かないで、笑って見送ってよ」
それでもまだ泣いてる母ちゃんに、
「地上界に着いたら連絡するからさ」
と言いながら皆に手を振って、地上界に続く池に飛び込んだ。
「うひょー」
俺は今落下してます。
う〜ん、神界は天上界だったんですね。大丈夫かな。半神だから大丈夫でしょう。
そして、俺は高らかに声をあげて地上に激突する。
「アレン様、地上界に只今参上!」
俺が地上に激突すると、ドーンと音と伴に大量の土煙をあげる。
そして土煙が晴れて俺が周りを見渡すと、そこは戦場のど真中でした。
今、正に両軍が戦いを始める直前だったみたいです。
「えーとこれは、どうすんの俺」
両軍が驚きかたまるなか、俺は呟いた。