エピローグ
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一学期終業式の日。担任が帰りのホームルームで言う。
「あー終業式になんだが、入学式以来病気で入院していた者がいるので紹介する」
こほんと咳払いをひとつ。
「入りなさい」
担任の言葉に従って教室の前方のドアが開いて、一人の女生徒が俯きがちにストレートロングの髪をなびかせて、つかつかと入ってくる。
教壇の後ろに立つとチョークを手に取り名前を書く。
そして前を向いて彼女は微笑んだ。
「祇園音羽です。みなさんよろしくお願いします」
音羽? 俺はその言葉に反応してぼんやりと外に流していた視線を正面に戻す。
「えーっと席は――おい君ッ」
担任の言葉なぞ聞かず、彼女は俺のところまで急ぎ足で来ると
「また会えたね、けいちゃんっ!」
と言って抱きついてきた。
「はっ!? えっ、姉ちゃん!?」
◆
ここは地獄の閻魔大王の私室。
「本当にあの判決でよかったのですかな? 山王音羽は地獄界から追放。甘すぎるのはありませんか」
「ふっ……爺やか。仕方あるまい。あの大罪人をこれ以上地獄に置いておくわけにはいかんからの」
「寂しくなりますな」
「べ、べつにあやつがいなくなったぐらいで寂しくなどない。断じてない」
「おやおや、涙目になっておりますぞ」
「! えーい、うるさい。今日も仕事は山積みだ。そろそろ行くぞ」
「はい。閻魔大王様」
爺と呼ばれた人間、閻魔補佐官の小野篁は恭しく頭を垂れた。
ここまで読み進めてくださって感謝します。これにて『俺の魂が美少女と交換されたのは地獄の姉ちゃんのせい』は完結です。




