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地獄

 俺たちは緋恵に連れてこられ地獄の家三途の川店に着いた。

「情報どおりならここに自宅謹慎中の姉ちゃんがいるんだよな?」

「そだよ」

 家は営業している雰囲気はなく、ひんやりと静まり返っている。

 恐る恐る呼びかけてみる。

「姉ちゃん。俺だよ、警吾だよ。予定よりだいぶ早くなったけどまた戻ってきたよ」

 返事がない。

 たまらず緋恵も声をかける。

「音羽。けいごんを連れてきたよ。居るならでてきてくれないかなあ?」

「……返事なしね」

 せっかく死んでまでして地獄に会いに来たのにどうすりゃいいんだよ。

 とそのときだった。

「なんじゃ。さっきから騒々しいのう」

 店の裏から人が出てきた。随分と高齢のじいさんだ。

「あの俺たち、姉ちゃ――音羽姉ちゃんに会いに来たんですけど……」

「ん? おぬしら音羽ちゃんの知り合いか?」

 俺はこくこくとうなずいた。

 横から警吾が訊く。

「ところでおじいさんは誰なんですか?」

「あ? わし? 三途の川の係員をやっている、懸衣翁じゃよ」

「あーあの、ぎっくり腰で通院することになった奪衣婆に付き添っているという」

うむうむと爺さんは首を縦に振った。そして目の前までやってくると、ジロジロと俺を観察しはじめた。

やがて、

「ひやっ!」

 俺はふいに、さわさわとお尻を触られて変な声を上げてしまった。

「うむ、なかなかナイスなお尻をしておるのう」

「くぉのっ変態じじい! 気持ち悪いことすんな!」

 平手を浴びせようとしたが、その手はむなしく空を切った。じじいとは思えないほどの俊敏さでかわされてしまった。

「ほっほっほっ、脱がすことを極めたわしにゃ、おぬしの平手をかわすことなぞ造作もないわい」

 誇らしげにじじいは言った。くっこのじじいなかなかやる。

「そんなことしている場合じゃないでしょ」

 警吾は居てもたってもいられずと様子で質問を浴びせる。

「音羽さんに会いたいんです。自宅謹慎でこちらにいるとうかがったんですけど、会わせてもらえませんか?」

 はじめてじいさんの表情が曇った。

「音羽ちゃんなら、ついさっき三途の川を渡って閻魔様のところに連れて行かれてしまったところじゃ」

「なんだって!?」

「一足遅かったみたいだね、けいごん。急いで後を追おう」

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