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到着


「……ごーん。けいごーん」

 遠くから俺を呼ぶ声がする。俺はゆっくりと目を開いた。目の前には吐息がかかりそうなぐらい近くに緋恵の顔があり、頬をぺちぺち叩かれていた。

「やっと起きた。着いたよ。地獄に」

 起き上がると冷気を感じた。隣には俺――警吾をした姿の蒼流が横たわっていた。

「緋恵よ。聞いていいか?」

「なーにけいごん?」

「なんで魂状態になったのに、俺は蒼流の姿のままなんだよ。前に来たときは警吾の姿だったろ」

「あたしもなんで警吾のままなの……」

 起きた警吾も困惑気味だ。

うーんと小首を傾げる緋恵。

「推測だけど、魂と肉体の定着現象? が起きたのかも。結構、長く入れ替わっていたから魂が肉体の形を覚えちゃった可能性があるね」

 俺と警吾はこくりとうなずいた。

「ってことは、その同化が完全になったとき、俺は違和感なく女の身体を受け入れていたと?」

「そうだね」

 心も身体も女になったら完全に入れ替わりだよな。

 マジで姉ちゃんは何がしたかったんだ。

 俺は緋恵に訊いた。

「さて、これからどうする?」

「二人を掴んで飛んで、音羽のいる地獄の家に行くよ」

 緋恵は薄く笑うと胸の内側に手を入れてさっと黒い布を引き出して、ばさぁっと羽織った。

「死神のマントを羽織れば飛ぶなんてわけないのだよ」

「二人抱えて飛んで重くないのか」

「んにゃ全然。元々、魂はふわふわしていて、それに重力のような霊圧をかけて無理やり地上に押さえつけているだけだから実際は軽いのだよ」

 それじゃあと緋恵は言葉を続ける。

「時間もないしそろそろいこっか。子鬼たちに見つかると面倒だしね」

「ちょっと待って。あたしたちの身体は現世においてきたままでしょ? このままお姉さんに魂だけで会いに行っても意味ないんじゃないの?」

 もっともな疑問を警吾が口にする。しかし、予測済みだったのか緋恵はすでに回答を用意していた。

マントを掴んで片手を水平に広げてみせる。

「マントの中を見て」

 そこには現世が映っていて、俺と警吾が地獄研究会の部室で倒れているのが目に入った。

「マントには現世と繋ぐ機能もあるんだよ。これなら肉体は持ってこられなくても、入れ替えることができる」

「えっ? じゃあ俺たちまで地獄に来る必要なんてなかったんじゃ……」

「いやいやあるある。現世と繋げられるのは魂の絆が必要だから。目的の魂がわかったときに移動するのにも使うし」

 言うが早いが、緋恵は俺たちの手をとり飛翔した。

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