選択
「うっす」
先にシャワーを浴びて、リビングで明かりだけつけてソファーに座っていた警吾に一声かける。
恨めしげに光のない目で一瞬俺を見てうつむく。
……。まあ無理もないか。
俺は警吾の反対側に座った。できるだけ優しい声音で問う。
「で、どうする?」
「……どうする? って」
俺はひとつ咳払いをして言った。
「このまま入れ替わって生きていくか、寿命を捧げてでも元に戻るか、だよ」
「どっちも却下」
「……というわけにはいかないだろ」
「そうね」
「……」
「……」
うう、沈黙が容赦なく重くのしかかる。
俺は、と搾り出すようにいう。
「しばらくこのままでもいいんじゃないかと思う。何も十六年分も寿命を支払って今すぐ元に戻る必要もないだろ」
「このままでいいわけない!」
どんっと警吾がテーブルを叩いた。俺はびくりと縮み上がった。
「あたしが好きになったのは山王警吾なの。なのに身体は自分自身なんておかしいでしょ!」
「そりゃまぁそうだが。入れ替わったままでも付き合うことはできるから別によくない?」
「男の身体で女の、元自分の身体と付き合うなんて無理よ」
警吾は顔を自身の手でおおうといやいやした。うぷっ、気持ち悪い。オカマっぽい男子と付き合うのには抵抗あるな。ここは話題をそらそう。
「姉ちゃんがなんで魂を入れ替えたのか気にならないか?」
「それは……確かに気になるわね」
俺は我が意を得たりとばかりに畳み掛ける。
「緋恵もなんとか連絡とってみると約束してくれたから、俺としてはもう少し結論を引き延ばしたいのだが……」
「うーん……仕方ないわね。でも期限付きね。期末テスト終了まで。その間だけ待ってみる。それでいいでしょ?」
たったの数週間かと思ったが、俺は我慢してその言葉を飲み込んだ。ずるずる引き延ばして解決するような問題でもないからだ。
「オーケー。今日はもう寝る。おやすみ」
「おやすみなさい」




