屋上にて2
「それは自分のことでもあってからだしさ」
「どうやったら戻れるのか真剣に考えたいの」
「そうだな……」
姉ちゃんのせいで魂が交換されたこと、姉ちゃんが携帯を落として地獄に戻ってしまったこと。どちらもまだ警吾には話していない。そろそろ話す頃合か。
「実はさ、俺たちの魂が交換されたことに心あたりがあるんだ」
「えっ? 本当?」
「本当だ。これをみてくれ」
俺は肌身離さず持ち歩いていた、姉ちゃんが落としていった黒いケータイ電話を見せた。
警吾は受け取るとしげしげと見つめ、観察しだした。やがて俺に返した。
「ただの壊れたケータイにしかみえないけど?」
「俺はこのケータイに触ったとき、全部を思い出した。一度死んだこと、地獄で姉ちゃんと会ったこと、閻魔大王のおかげで生き返ることができるようになったこと」
俺はかいつまんでいきさつを話した。
警吾はにわかには信じられないといった顔をした。
「じゃあ、今の状況は……」
「地獄の姉ちゃんのせいってことになるな」
警吾はふらふらとよろめくと落下防止のフェンスに背中を預けた。
「何そのオカルト。そんなことあるわけないじゃない。冗談でももっとマシなこと考え付かないの?」
「でも、現実に魂が入れ替わっているのは事実だろ?」
「……」
瞳の奥底に隠れている何かを探るように、警吾はじっと俺を見つめてくる。俺も目をそらさずにその視線を受け止めた。




