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対決

 早くも一週間が過ぎ去った。

 今日の昼は警吾がさっさとライカを連れて出て行ってしまったので、一人で食べることになった。学食でパンを買ってきて、自分の席に戻って外をぼんやり眺めながら口にする。最初はどうなることかと思っていた入れ替わり生活も、存外悪くないと思いはじめた。

 と、そのとき。

 ぬっと席の前に影が立ちはだかった。ん? と見上げると三人組の女子が俺を見下ろして立っていた。

 誰だ? こいつら。でもどこかで見たような。

 中央にいる女が声高に口を開く。

「おひとりで食事中のところ悪いんだけど、ちょっとあたしたちについてきてくれない?」

 全然悪気がなさそうに言われても……。

「悪いと思うなら食事が終わるまで待ってくれないか?」

 ちっ。取り巻きの一人が舌打ちする。

「いいから黙ってついてきなさいよ」

 肩の間に腕を入れて無理やり立たせようとする。

 むかっときて俺は腕を振りほどいた。抵抗されたことに驚いたのか、相手は目を丸くしている。

「食べ終わるまでどこにもいかねぇ」

 俺はそう宣言した。三人組は怯んだ様子を見せた。本当に薬院なのこいつ、なんて言ってやがる。

人の目に見られながら食事するのも気持ち悪い。俺は牛乳とパンを掻きこんだ。

「準備できたぞ。さぁどこへ連れて行ってくれるんだ」

「こっちよ」

 着いた先は人目につかない体育館裏だった。ベタすぎて笑いがでそうになった。

「一体どういうつもり?」

「それはこっちのセリフだ」

「だ、か、ら。ライカ君のことよ」

 あっ思い出した。こいつらプリクラとったときにいちゃもんつけてきた奴らだ。

「どういうつもりも何もただの友達さ。それ以上でも以下でもない」

 額をぴくぴくさせて中央の女が言う。

「友達というのがダメだって言ってのよ」

「意味がわからん。誰が誰と友達でもいいだろ」

「わからない人ね。いいライカ君は汚れちゃいけないの! 見なさいこの腕章を」

 三人そろって右肩を出してくる。

「ライカ君を見守る会? ああ、そんなこと言っていたな」

「ライカ君と女子は友達になっちゃいけないってわけ。それがこの会の絶対の協定」

「……。男だけど警吾はいいのかよ」

「あの野生児は問題ないわ。元から眼中にないもの」

ひでえ言われよう。本人に聞かせてやりたい。って俺じゃねぇか! 

「とにかく俺はライカと友達をやめるつもりはないとだけは言っておく。それじゃあな」

「ちょっ待ちなさいよ」

俺は肩に掴みかかる腕を素早く払うと、正拳突きを顔面直前で止めた。

「今度はとめないからな」

蒼白になりへなへなと座り込む相手を慌てて二人が抱える。ふんっ。これで懲りただろう。

「大体、あいつはライカを顔だけで選んだわけじゃねえ。趣味まで理解して追いかけてやがるんだ。お前らとは覚悟が違うんだよ」

 あいつ? 警ゴリのこと?

 三人組に不思議そうな顔で見られて、しまったと思ったが、立ち去ることでごまかした。

「ああっもうややこしいなっ!」

 俺は頭をがりがりかいた。

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