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ライカの部屋

「新キャラの佐倉先輩、使っていて楽しい」

「僕もサブキャラで使おうかなあ。技も似ているし。警吾は使った感じどうだった」

「基本は同じだけど、中足の出が少し早くなって強くなったかも」

 次の日から俺たちはライカと自然に会話をするようになっていた。昨日の一件が、俺たちの仲を急激に進展させた。やはり話の中心はゲームのことだ。

 誰かが薬院蒼流に話しかけてくるのは、事務的なことばかりだったので、趣味の会話ができるライカたちとの会話は楽しくて仕方がない。警吾もライカと話ができて満足そうだ。

「そうだ。今日の放課後、僕の家に来ない? 新しいゲーム買ったんだ」

「えっ!? いいの? ぜひ行きたいかな」

「ちょ、ちょっと待て!」

 俺は慌てて止めに入った。

 警吾にグッとつかまれて、ライカに背中を向けたうえで耳元にささやかれる。

「何で邪魔するのよ」

「世の中には知らないほうが幸せなこともたくさんあるってことだよ」

「意味が解からない」

「ライカのイメージを崩したくなかったら行くのはやめろ」

眉目秀麗、成績優秀なライカに恋話のひとつもでない理由。それはなんとなくみんなが知っていて、ほとんどは真実を知らないことなのだ。

「嫌、逆に興味わいたから意地でも行く」

「……ったく仕方ねぇな」

 俺はくるりと振り向くとライカに言った。

「ライカ、俺も行っていいか?」

「いいよー。でも女の娘には退屈かもしれないよ」

 周囲がざわざわとゆれる。

 行く前から頭が痛くなってきた。


「着いたよ」

 何度も通った場所だ。言われなくてもわかっている。

 しかし警吾はちがう。ほえーと口を開け興味深そうに眺めている。

 瓦屋根のごく普通の日本家屋がライカの家だ。両親と祖父はロシアで暮らしていて、日本では空き家になっていた祖父の家で一人暮らししている。

「警吾、薬院さんと先に部屋に行ってて。僕は飲み物用意してくるから」

「こっちだ」

 警吾のズボンを引っ張ると俺は迷いなく廊下を突き進む。やがてひとつのドアの前に立った。

「いいか。お前の想像以上のものがあるかもしれないけど、心を強く持てよ」

「ごくり……。そこまで言われると緊張するわね……」

 俺は意を決してドアを開けた。

 飛び込んで来たのは部屋一面に張られた美少女(しかもロリ限定)のポスター群。壁には美少女フィギュアがきれいに整理されて飾られている。

「……すごい」

 警吾は真のオタクの部屋に圧倒されている。歯止めがきかないオタ部屋ほどひどいものはない。俺はその間に危険なものがないかを素早く見渡し調べる。

「うおっとお!」

 俺は素早くベッドに飛び込むと、絵的にやばすぎる抱き枕をつかみタオルケットの下に隠した。

「ど、どうしたの?」

「いや、何ちょっとベッドの感触を確かめたくなってな」

「え、それってどういう意味……」

 やばい。自分でも何を言っているか解からなくなってきたぐらいにやばい。

 むしろ木を隠すなら森みたいな感じ? 逆に全てが自然に思えてきた。机の上にあるエロゲー『べのもの』も全然気にならねー……わけあるかよ! 「はいぃっ!」

百人一首を取る要領でバシィッと机の上に乗っているエロゲーDVDをとる。

「ねぇ、あんたさっきから何やっているの?」

「おう、百人一首に凝っていてな。最近、身体がなまっていたからその素振りを急にしたくなったんだ。はいいっ!」

 俺が超汗だくになってライカのイメージを守ろうと孤軍奮闘している中、やっと本人がお盆に麦茶を載せてやってきた。

「どうしたの薬院さん、そんなに汗かいて。冷房入れてもいいんだよ」

(お前のためにやってんじゃねえかあ!)

 俺は麦茶をつかむと一気に飲み干した。もうやってられない。

「ね? 薬院さん。僕の部屋に来てもたいしておもしろくないでしょ?」

 ハッと我に返った警吾が目を覚ましたかのように言う。

「ひとつの趣味にこれだけ情熱をかけれるなんてすごいかも……」

 え? てっきりドン引きすると思っていたのにまさかの反応に俺は驚いた。

 ライカの前に撃沈していく女を俺は何度も見てきた。それはライカが見かけによらない重度のオタクであり、話にまったくついていけなくなり挫折するからだ。

 高校になってライカには深く近寄らない空気が出来ているのは、重度のオタクである事実が噂となって広まっているからだろう。それでもライカが女からもてるのは、ロシア人とのハーフの顔立ちが抜群に整っているからなのだろう。

 俺はこういった。

「全然退屈しないよ。個性的でおもしろいね」

ライカはお盆をおくと急に握手を求めてきた。

「そんなこといってくれたの警吾以来、二人目だよ! 薬院さんとは本当に良い友達になれそうだよ」

「はははっ」

 警吾はわたしが言ったのに~とでも言いたげにジト目で睨んでいる。

 好きな男のゲームを知ろうとやりこんであそこまで格ゲーが強くなるんだから、気合入っているもんな。そりゃ今まで外見だけで釣られてきた女共とはちがうよな。

 警吾――薬院蒼流ならあるいはライカと上手く付き合っていけるかもしれない。そう思うとなぜか胸の奥がちくりと疼いた。

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