放課後の戦4
プリクラから追い出されて、俺はぼへーっと座って、二人が出てくるのを待つことにした。すると、少し離れた場所からじとりと湿った視線が複数送られてくることに気づいた。
視線の主は……誰だ?
見覚えがある気がするが名前がでてこない。というか俺、女子の友達なんていないしな……。
仕方なく知らん振りしていたら、相手の方から近寄ってきた。俺は立ち上がると「よう」と声をかけた。
ストレートロングの女子が怒りをにじませて話しかけてくる。
「薬院さん。あなたどういうつもり? ちょっと慣れ慣れしすぎない?」
「んあ? どういうつもりって何がだよ」
「ライカ君のことに決まっているじゃない」
「ライカ? あいつがなんだってんだよ」
「ラ、ラ、ライカですって」
呼び捨てにしたよ今。信じられない。ビッチよ。ビッチだわ。
三人でごにょごと言い合っている。
さっぱり話が見えなくて俺は首をかしげた。
「で、何か用なわけ?」
「しらじらしい。この抜け駆け猫が」
抜け駆けって……。忍びなの? 忍猫なの?
ショートカットの女子二号が言う。
「あんた、ライカ君を見守る会の協定を知らないわけじゃないでしょうね?」
「いや、知らないけど」
即答。メガネをかけた女子三号が地団太を踏みながら言う。
「ライカ君は、わたしたちにとって聖域。王子さまなの。遠くから見守ることだけがゆるされるのよ」
「はぁ……。つっても俺とライカは友達だしなあ」
「と、友達!?」
三人はスクラムを組んで小声でひそひそと何事か話し合う。
ライカは男の俺から見ても眉目秀麗だと思うし、クラスの女子連中から人気があるのは薄々感じていた。ライカが女子だったらと思ったことすらある。
しかし、まさかファンクラブみたいなものができているとまでは思わなかった。
そういや警吾――薬院蒼流――が、俺とライカのことを美女と野獣みたいに言っているってつぶやいていたような。
そんなことを思い出していたときに、警吾がのそりとプリクラ機から出てきた。
「ひっ、警ゴリ! と、とにかく今後はライカ君と距離をとることね!」
言うだけ言うと三人組はものすごい速さでゲーセンの奥へと消えていった。
警吾が俺に訊く。
「何かあったの」
「さぁ? よくわからね」
続いてライカも外に出てくる。
現像されたプリクラを受け取ると、警吾は満足そうな笑顔を浮かべた。
 




