放課後の戦3
格ゲーのお試し対戦会も終わり次は何をしようかということになった。
ライカは両腕を組み思案する。
「薬院さんはは何かやってみたいゲームとかある? 音ゲーとかどう?」
警吾が隣によってきて、身をかがめるとこしょっとささやく。
「友プリとりたいって言って」
「トモチケでパキるのか? お前にそんな趣味があったとは意外だったぜ」
「トモ……チケ? 何言っているのかわからないけど、あたしが言っているのは友プリ。友達ととるプリクラのことよ」
「えー。野郎同士でとるのかよー」
「あんた、今は私の姿じゃない。チャンスでしょ」
何がチャンスなのかよくわからなくて俺は首をかしげた。
しかし、俺が入れば男子二人に女子一人だから、傍からみればおかしくはない。あとあと面倒になるのも嫌だし、貸しを作っておくことにするか。
「せっかくだから三人で友プリとりたいかなー(棒読み)」
ライカの顔に華が咲いた。
「友プリかあ。いいね。新鮮だ。記念にもなるしね」
ライカの言葉に警吾は飛び跳ねんばかりにうきうきとしている。
俺は太いため息をついた。
俺たち三人はプリクラコーナーに移動した。
入り口には、女性客を同伴していない男性客は立ち入り禁止、という看板がおいてあった。盗撮などの犯罪を防ぐための措置なのだろう。野郎だけでも、とりたいという奴もいるのに惨い話だ。俺はそんなの嫌だけど。
それにしても気恥ずかしいな。当然、周囲は女友達同士か彼氏連れの爆発希望カップルばかりだ。普段なら絶対に立ち寄らない、言わば聖域。むしろ、魔界。
なのに普段どおりのライカ。こいつなんでこんなに平気なの?
警吾はうむむと唸りながら真剣な瞳でどれにしようか吟味している。何がちがうのかさっぱりわからん。
俺は居心地が悪くなって催促した。
「プリなんてどれも同じだろ。さっさと決めろよ」
「全然ッちがうわよ!」
「お、おう……」
怒鳴られてしまった。
大男がプリクラをあさっている姿は見るからに怪しい。店員がちらちらこちらを見ているのは気のせいだろうか。そうこうしているうちに本当に店員が近づいてきた。俺は慌てて警吾の袖を引っ張って近くのプリクラの中に入った。
「ちょっ……何すんのよ」
「店員が声かけようとよってきてたんだよ。もうこれでいいだろ」
「ん? どれにするか決まった?」
ライカも入ってきたので、それ以上警吾は文句を言わなかった。
「近い、近いって!」
いざ、プリをとるとなると、警吾の顔が大きすぎて三人の顔がきっちりおさまるアングルを探すのに苦労した。俺が小顔の美少女じゃなかったら無理だった。
「せっかくだから、ライカ君とふたりでもとりたいな」
「うん、いいよ」
よくねぇよ! おかしいだろ!
「具合悪くなってきた。俺外で待っているから」
警吾はプリをとるのに夢中で聞いちゃいない。手をひらひらさせて勝手に出て行けといわんばかりだ。
なぜ男子禁制の場所で女子である俺がこんな理不尽な仕打ちを受けなければならないのか。まったくもって不愉快だ。




