昼休みの過ごし方3
席には対面にライカがひとりで座り、俺と警吾は隣同士で座った。
ライカが何気ない風に警吾のメニューを見て言う。
「警吾が野菜サラダだけって珍しいねー。いつもはカツ丼大盛りとかボリュームがあるのを食べるのに。そんなので午後の授業持つの?」
「……。え? あたしのこと?」
ライカに指摘されて警吾は、大きな手の平をぶんぶんと顔の前で左右に振る。
「えっ! いやいやいや。あたしそんなに食べないよ。どちらかというと小食だし!」
なぜそこで全力否定?
実を言うと、俺も野菜サラダという選択は気になっていた。
薬院蒼流の身体は以前の山王警吾の身体に比べれば大人と子供ほども差が有り、省エネだ。食欲はわいてもそれほど食べたいと思わないし、日替わりランチだけでも結構な量に感じる。
対照的に警吾の身体は、ちからはあるがその分、燃費が悪いはずだ。実際に警吾が昨日の夜にカレーを大盛りで平らげていたことを思い出す。
なぜ、ダイエットしている女子みたいなチョイスをしたのだろうか。
というかあたしっておいィ! 俺は右ひじで警吾のわき腹をつついた。わたわたしていた警吾は、我を取り戻し、うつむくとひざの上に両方の拳をのせた。
「ふうん。まぁそういう気分になるときもあるよね」
さして気にも留めないようにライカはにこやかに言った。
それから俺たちはいただきますして各々の食事に取りかかる。
食事の合間にライカが警吾に対して話を振るも、「うん」とか「そうだね」ばっかり言ってすぐに会話が終わってしまう。目を合わせようともしない。
これにはライカも苦笑い。
自然とライカは俺に水を向けてくる。
「薬院さんは普段どこで食べているの?」
「……。え? 俺のこと?」
どぐふっ。
今度は俺のわき腹に小突くにしては重い一撃が飛んでくる。執拗に狙うボディのような痛みだ。一瞬、呼吸が止まってくの字に身体が折れる。こいつにはてかげんの精神コマンドが必要だと思う。ってHPが10だけ残って瀕死になるだけだからだめじゃねーか。
それはさておき、やっぱそれ聞いてきちゃうよね?
むしろ俺の方が聞きたいのだが……。
ちらりと横の警吾に視線を投げかける。昨日のがっつき具合が嘘のように、ちびちびとサラダを口に運んでいる。全然、周りのことが目に入ってないようだ。
ここは適当に答えていいだろう。
「うーん。他のところでひとり……じゃなくて、人がいないところで食べることが多いかも?」
「かも? ふふふっ、そうなんだ。なら、これも何かの縁だし、今度から僕たちとたまには食事しようよ。いいよね警吾」
「……う、うん。ライカ君がそういうなら」
ぎろり。急に周囲の女子から集中した視線を感じた。奥の方の席に座っている女子なんて、ぐーで箸を握り締めて、敵意を込めて睨みをきかせている。殺意の波動すら感じる……。わけがわからん。
「じゃあ僕、用事があるから先にいくね」
「うん」
「おう」
ライカは一足先に食べ終わると、席を立ってどこかへでかけていった。
警吾はというとまだ半分も残っていたサラダを、一口でぺろりと食べ尽くしていた。なんだったんだよいままでの遅さは。
本当にこいつもよくわからない奴だ。
ごちそうさまというと、警吾もどこかへ出かけていった。
俺は最後に残しておいたたるたる白身魚フライを食べた。うまいたるー。




