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風来の日曜日6

 風呂に入って喉が渇いた。飲みものを求めてリビングへと足が向いた。

 そこには、ソファーに座ってテレビを見ている先客がいた。

 警吾がテレビから視線を外し、入ってきた俺に声をかける。

「随分と長い間入っていたのね――ってあんた! なんて格好しているの!」

「や、少しのぼせてしまってな」

 警吾は血相を変えると立ち上がり俺の前まですっ飛んできた。

 指を突き出し、わなわなと震え声で怒鳴る。

「だ、だからって上半身裸で歩き回らなくてもいいでしょ! 本当信じられない。マジ最低!」

 散々な言われようの俺の格好はといえば、下だけルームウェアを着て、上半身は首にタオルをかけて素っ裸だった。

 普段でもよくやる格好だから特におかしなところはないはずだが、何をこいつはそんなに怒っているのだろうか。どやされながらふぅむと考え、閃いた。

「あ! わかった。おっぱいか? そこは髪とタオルで隠れているから問題ないって」

「問題大有りよバカ! 変態! 死ね! バカ!」

 俺は小さくため息を吐くと、肩をすくめてみせた。

「お前しか見る相手はいないし、別にそんなに怒るようなことでもないだろ」

「あーもうっ! うるさい! つべこべ言ってないでさっさと服を着る!」

 俺はがしりと腰をつかまれてくるりと半回転させられると、片手に持っていた半そでシャツを剥ぎ取られた。次に万歳のポーズをさせられてすっぽりとシャツを着せられた。

「……ったくなんなんだよ」

「あんたには、決定的に女子力が足りないわ」

「決定力不足ってサッカーでよく聞くー。監督、おっぱいの大小は女子力に含まれ――」

 ないのですかと言いいかけて、射抜くような視線に睨みつけられて俺は黙った。

 いい? よく聞きなさいと、警吾は諭すようにゆっくりと言う。

「家で油断している女は、外でいくら猫被っていても簡単にボロを出すの。ましてやあんたなんて女になって数日しかたってない、言わば女子初心者。女子力に換算すればたったの5のゴミレベル。そこのところもっと自覚してくれなきゃ戻ったときに困るでしょ」

 こいつ、裸眼で女子力を数値計測できたのかよ……。無駄にすごい特殊スキルだな。いらないけど。

「オッス! オラ蒼流。今度から気ぃつけっぞ」

「あんた、ふざけているの? 首を絞めて殺してほしいの?」

「おっと。自分の手にかかって死ぬのはごめんだぜ」

 俺は警吾が伸ばしてきた腕の横をするりとかわすと、冷蔵庫の前に移動した。とびらを開けて中から牛乳を取り出し、コップに注いで飲んだ。

「ぷっはー。風呂上りの一杯最高!」

 元、俺の身体――山王警吾――の身長が高いのは、牛乳を飲むと背が伸びるということを信じて中学の頃に牛乳を飲み続けていた成果だと信じて疑わない。まぁ警ゴリなどと影で不名誉なあだ名をつけられるほど成長したのは想定外だったが……。

 そういえばおっぱいも牛乳を飲むと育つと聞いたことがあるような。身体が交換されたのも何かの縁。今日からがんばって俺が代わりに育ててやろう。

 ああ、憧れのおっぱいマスターになりたいな。ならなくちゃ。絶対なってやるぜ。

 俺は決意を込めて警吾に向かっていい笑顔で親指を立てた。

 そんな俺の行動に対して警吾は、口角をぴくぴくと震わせて、苦々しい冷笑を浮かべるのだった。

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