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風来の日曜日2

 ぎりぎりぎりぎり。俺は歯軋りをして片肘をつき警吾を睨みつけた。

 警吾はまったく怯んだ様子もなく言葉を続けた。

「あたしの格好をしたあんたが、薬院蒼流が山王警吾の家に住むのは無理。そんなことぐらい理解できるでしょ?」

「そんなこと言うけどさ、お前がここに居るのもおかしな話だろ。大体、俺がいなきゃ家にすら入れないくせに」

 警吾はギロリと睨みをきかせた。

 ひぅっ。口から漏れそうになる叫び声をなんとか飲み込む。

だめだ。ここで口論になっても勝ち目がない。悔しいが主導権は警吾側にある。ここは押すべきところではなく、引くところだ。

 俺は目を閉じて軽く深呼吸して心を落ち着かせた。

 人差し指を上に立ててゆっくりと腕を前に突き出す。

「わかった。じゃあこうしよう。夕飯を俺に作らせてくれ」

「……? どういうこと?」

「せめてご飯ぐらい、まともなものを食べたいんだ」

「それならピザとかマックとかの宅配でもとればいいじゃない」

 なに『パンがなければケーキを食べればいいじゃない?』みたいなこと言ってるの? お前は現代のマリー・アントワネットなの?

「俺がいいたいことはそうじゃなくてだな――」

 警吾は何が言いたいのかわからないという風に首をかしげている。

 ふぅと俺はため息をつき、一気にまくし立てた。

「インスタントとかジャンクフードばっかりじゃ、健康に悪いだろ。俺も一人暮らししていたからさ、そういうのは飽き飽きしているんだよ! 簡単な料理でもいいから自分で作って食べたほうがおいしいっていいたいわけ!」

「料理? あんたが?」

「ああ、そうさ」 

 どうせお前に料理なんてできないだろ、というのは口に出さないでおいた。そんなことはカップ麺地獄と食器がごっちゃりとたまっている台所のシンクを見れば一目瞭然だ。

 警吾はじと目で探るような視線をよこす。

「あんた、何か企んでいる? 本当の目的は何? 正直に白状すれば今なら罪を軽くしてあげるわよ」

「司法取引かよ! つーか何も企んでねーし! というわけでだな、夕方になったら食料品の買出しに行ってくる。だから食費をくれ。あと、自転車もあったらグッドだ」

「なんであたしが食費をもたなきゃならないわけ?」

「そりゃあ二人分用意しなきゃいけないからな」

「え……」

「なんだよ。俺が作った料理は食べたくないっていいたいのか? まぁ……味は保証できないけど、自炊しているから簡単なものぐらいは作れるぞ」

 警吾はきょとんとしている。鳩が豆鉄砲を食ったようとはまさにこんな顔をいうんだろうな。どちらかというと今食べていたバナナを突然とりあげられたゴリラのようだけど。

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