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Hinger Four

 俺たちはリビングにもどってきた。

「あー腹減った。で、夕食のごちそうはどこにあるんだ?」

「目の前にあるじゃない」

「は? まさかこれのことか?」

 キッチンに隣接する食卓の上には見覚えのあるカップ麺がのっていった。

「味に不満があるなら別のもあるわよ」

「いや、そうじゃなくてだな……」

 夕飯を用意すると言っていたからてっきり手料理が出てくるものとばかり思っていたので俺は心底がっかりした。散歩の疲れがどっと身体に乗っかってくる。

 警吾は自分の分にポットからお湯を注ぐと席についた。味のこだわりなんてどうでもよくなって用意されていたものに俺もお湯を注ぎながら質問する。

「はー……。お前さ、料理とかしないの?」

「えー? 料理なんてしないわよ。だって面倒なんだもん」

 警吾はさも当然という風に言い放った。

「じゃあ普段どんなもん食ってるんだよ?」

「そうねえ、だいたいインスタントや冷凍食品が多いわね。あとは外食したりお弁当屋さんで買ってきたものを食べたりもするかな。たまに出前をとったりするときもあるわね」

 なんて残念な奴なんだ。現実なんてこんなものか。女子高生なら料理ぐらいお手の物だろうと勝手に思っていた俺の心は失望に包まれた。

 俺は警吾と向かい合うようにして席に座った。そのとき、食卓のテーブルからカウンター越しにキッチンの流し台が見えた。洗ってない食器がごっちゃりとたまっていて、警吾の食生活のすべてを物語っていた。

「俺ですら簡単な料理ぐらいはするぞ。よくこんな偏った食事ばっかりでこの身体を維持できたものだな」

「うっさいわね。料理は苦手なのよ。それにあたしは太らない体質だから何を食べても平気なの!」

 広いリビングでたったひとりインスタント食品を食べるこいつの姿を目に浮かべた。豪邸暮らしと似つかわしくなくて、なんだかとても不憫に思えてきた。俺にはこんな食事が毎日続くなんて耐えられない。今度食材でも買ってきて何か作ってやろう。カップ麺をすすりながらそんなことを考えた。

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