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VISIONNERZ

 帰りのホームルームが終わった。俺と警吾は机に突っ伏した、

「はー。やっと一日が終わった」

「本当に疲れたわ」

 家に帰ろうと机の横にある鞄を掴んだところでぴたりと俺たちふたりの動きがとまった。

「「あ!」」

 お互いに顔を見合わせた。

「どこに帰ればいいんだ?」

「どこに帰ればいいのよ?」


「……でけぇ」

 威風堂々と佇む立派な門構えを前にして最初にもらした感想だった。俺たちは警吾の、つまり薬院蒼流の自宅前に来ている。

「お前の親ってどこかの芸能人かなんか?」

「なわけないでしょ。単に家が大きいってだけのことよ。それに一人で住むには広すぎてつまらないわ」

「単に……ねぇ」

 一方の俺の自宅はというと、ごくごく庶民的な市営マンションの3LDKである。一戸建てというだけでもうらやましく思うというのに、蒼流の自宅ときたらまさに豪邸という名が相応しい洋風の三階建て家屋だった。表札にはローマ字で名字が“YAKUINN”と書かれている。それだけでやたらとオシャレに思えるから不思議だ。表札の横には、テレビCMで見たことがあるセキュリティ会社のステッカーシールが貼ってある。俺の友達の中でホームセキュリティに加入している家庭などみたことがない。

「カメラの前に立って目を開いて」

 警吾に言われてきょろきょろとあたりを見回す。門の角に設置されているカメラと目が合った。

「ちがう。ちがう。そっちは監視カメラ。あんたが見るのはこっちの生体認証カメラの方」

 指さされた方向を見る。表札の下にオートロック式マンションに設置されているのに似たパネルがあった。俺がカメラの前に立ったことを確認すると、警吾は俺のポケットからすばやく財布を抜き取った。

「あ! それ俺の財布」

「あんたのじゃなくてわたしの財布でしょ。大事なものも入っているし、これはわたしが預かっておくわ」

「ちっ」

 警吾は財布から一枚のカードを取り出すと、カメラの下にかざした。

ぴっ。短い電子音が鳴った。

「認証を開始します。瞬きせずに、カメラを一秒間覗いて下さい」

 うぉっ! 突然に流れだした無機質名な音声案内にびくっとする。その様子をみて警吾が可笑しそうにわらう。

 ぴー! 今度は長めの電子音がして、カメラ横のLED表示が赤から緑に変わった。

「認証完了。お帰りなさいませ、蒼流お嬢様」

 音も立てずに扉がゆっくりと開く。その一連の動作を俺は口を半開きにしてながめていた。警吾は慣れた調子で門をくぐっていく。

「ぼーっと突っ立ってないでさっさと入りなさいよ」

「お、おう!」

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