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Movin' In Circles

 昼休みになって、一部の生徒は学食へ行き、一部の生徒は机をつき合わせて持参の弁当を広げている。

 ぐきゅううと腹が情けない音をあげた。今朝の騒動もあって、いつも以上に腹がへっていた。普段だったらライカが誘いにきて、学食か購買部へ行き腹を満たすところだ。ライカがいないときは大抵一人で済ませる。今日のライカはというと別の友達に誘われてどこかへ行ってしまったようだ。

 蒼流の姿をした俺を誰かが食事の誘いに来るかもと緊張したが誰もそんな奴はいなかった。こんなとき、いつものあいつならどう過ごしているのだろうと思った。自分の腹具合よりも、警吾がどうするつもりなのかの方が気になった。

 警吾はあたりをきょろきょろと見わたしている。あいつもどうしていいのかわからないでいるのだろうと予想した。

 トイレに行ったときみたいにさりげなく外に連れ出すか、と考えていたときだった。

「やほほー! けいごん、おはこんにちぃ」

 妙にテンションの高いセーラー服が警吾に声をかけていた。俺は顔をしかめて、こめかみをとんとんと叩いた。やっかいなのが出てきやがった。中学からの腐れ縁、桜坂緋恵おうさかひえ。なぜか知らんが、やたらと俺につきまとってくる変な奴だ。緋恵のクラスは隣なのだが、たまに俺のクラスにまでやってくる。大方、昼飯でも誘いにきたのだろう。話していて気のおけない奴なのだが、今は間が悪い。

「!」

 警吾は幽霊にでも会ったかのように目を見開いている。どう対応したものか困っている様子だ。そんな警吾にかまわず緋恵は言葉を続ける。

「あっれー? そこは『やほほー! ……じゃねぇ! そのけいごんいうのはやめろ』って返すところじゃないのー? つってもやめてあげないけどね。怪獣みたいでかわいいし。がおーって吼えてみて、ね、お願い。にははっ」

 両手を頭の後ろに組み天真爛漫な笑みを浮かべる緋恵。対して警吾は完全にドン引きしている。

「でさ、今日のお昼ご飯どうするかもう決まった? 緋恵はねー、学食の期間限定冷やし中華にでもしようかと思ってるんだけどさ、けいごんもどうなのさ」

「……」

 警吾は緋恵に圧倒されているのか口を動かそうとするも言葉にならず、何も答えられないでいる。さすがにいつもと様子が違うことに気づいたのか、緋恵が心配そうな声をかける。

「そういえば今日の朝は来てなかったよねー? どったのさー? もしかして本気でどこか気分でも悪い?」

 眉の上で綺麗に切りそろえられた前髪を上げ自身のおでこに左手を当てて、もう片方の手を警吾の額にかざそうとしたときだった。

「さわらないで!」

 今まで黙っていた警吾が鋭く叫ぶ。びくりと緋恵の手が引っ込む。何事かとクラスにいた連中が動かしていた箸と口を止め、二人を見やる。硬直した空気が教室を包む。やばい、どうにしかしないと。そう思うと同時に、俺の身体は勝手に動き出していた。

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