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Fighting Blade

じっと警吾の瞳を覗き込むことで俺は懸命にいつだったかを思い出そうとした。

(そうか。この目は泣くのを我慢して強がっている子の目だ)

 警吾が精一杯の虚勢をはっていることを見抜く。図体は大きくなっても魂はこの小さな身体に入っていた女の娘なのだ。今まで吐かれた暴言の数々も気が立って出たものと思えば納得がいく。むしろ、そうでも思わないと俺の精神衛生上よろしくない。

「黙ってないでなんとか言いなさいよ」

 俺の肩からふっと力が抜けた。

「わかったよ。俺も元に戻れる方法をいっしょに探してみる。なっ、だから泣くなよ」

「泣いてなんか……ないっ!」

 真っ赤に充血した目でいわれても説得力はなかった。

「どちらにしろ生活していく上ではお互いの協力が必要になる。だったらここで仲たがいしても仕方ないだろ?」

 建設的な提案に警吾の緊張がゆるむ気配があった。

「本当に探してくれるのね?」

 高い位置から真意を図るようにして警吾が俺を上目遣いで見つめてくる。怖すぎて思わず目をそむけたくなるのをぐっとこらえた。

「ああ」

「約束?」

 約束の一言に奇妙なひっかかりを覚えたが、俺はこくりとうなずいた。

「約束する」

「……わかった」

 警吾が手を差し出した。俺は反射的に後ろにさがった。

「なんだ?」

「決まっているでしょ。仲直りとよろしくの握手よ」

 俺は口元をゆるめた。

「な、なによ、ニヤニヤしてきもちわるい」

「いや、なんでもないさ」

 俺は小さく首をふった。

 ついさっきまで泣いたり怒ったりしていたかと思えば、次の瞬間には素直に握手を求めてくる。感情の変化めまぐるしいことこの上ない。男の俺には理解不能な思考回路がいかにも女という気がして微笑ましかった。口は悪いが、案外根はいいやつなのかもしれない。

 俺は手を差し出し、警吾の手を握った。その手はとても大きく力強かった。

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