一生のお願い
「けいちゃん、見て!」
小さく叫び声をあげた姉ちゃんが指差す方向を見る。木陰から桃色をしたわたがしのようなものがぴょこんと現れた。まるで小動物のようにふるえている。
「あれは? もしかして委員長の人魂なのか?」
「そうみたいだねー。身体から出たばっかりみたい。これなら身体に戻せるよ」
「本当か!? だったら頼む。こいつも生き返らせてやってくれ」
「一生のお願い?」
「一生のお願い!」
「だったら音羽のお願いもきいてくれる?」
「なんでもきく。だから頼む!」
姉はもじもじさせて意を決したようにいった。
「お別れにちゅーしてほしいな」
「よし、わかった。ちゅーすればいいんだな。まかせろ。――え?」
勢いで了承してしまったが、今なんていったんだ? 聞き間違えでなければちゅーしてほしいといったような。
俺はすっかり動揺してしまい、落ち着きを取り戻そうと両腕を組んで沈思黙考した。
俺と姉ちゃんは姉弟なわけで、そんなふたりがキスをするのは倫理的にもご時世的にもいろいろと問題がある。一方でもう一人の俺がささやく。別に、姉ちゃんのことは嫌いでもないし、今は霊の状態だからそんなもの関係ないはずだ。それに次に逢えるのはいつになるかわからないぞ、と。
ちらりと姉を見る。
「!?」
早くして、お姉ちゃんも恥ずかしいんだよ。と言わんばかりに顔を真っ赤に染め上げ、上半身をちょっぴりつきだし、目を閉じて俺の次の行動を待っていた。自然と大きな胸が強調される格好となり、俺の理性の壁を激しく打ち鳴らす。
ええいっ! 据え膳食わぬは男の恥。迸るパトスの激流に身を任せ、彼女を抱きしめて唇を奪ってしまいたい。それが姉ちゃんの望みなら何を迷うことがある。さぁ行くがよい。理性の壁などぶち壊してしまえ!
姉ちゃんの唇にやわらかいものが触れた。




