すけすけの歌
さて――と、問題はここがどこの上空かということだ。俺はあぐらを組んで、眼下に望む町並みを観察する。碁盤の目状に区切られた特徴ある町並み。やたらと多い神社仏閣らしき建物の数々。この二つが符合する場所といえば――
「ここは京都なのか」
ぱちぱちぱち。拍手のなる方角を見上げると姉ちゃんが体を丸めて愉快そうに微笑んでいる。
「ご明察。さっき通ってきた井戸が京都に通じているって本で読んだことがあるからたぶん間違いないよ」
「場所がわかったのはいいとして、ここからどうやって俺の身体まで帰るのさ」
京都から俺の住む御霊市までは遠く離れている。京都には中学のときに修学旅行で一度きりしか来たことがなかった。当然ながら地理には明るくない。線路伝いに空を飛んで行くぐらいしか俺には帰る方法が思いつかなかった。
「そんなにのんびりしていたら成仏しちゃうよー。現にほら」
姉ちゃんが指差す方向を追って自身の体に視線をなげる。身体のむこうに本来なら見えないはずの景色が透けてみえる。
「うわわわっ! これってやばくない!? 絶対やばいよねェ!?」
「けいちゃんすけすけ、すけべさんー」
「ちょっ……こんなときに変な歌を歌ってんじゃねェよ!」
「まぁまぁ慌てない、慌てない。待てば成仏日和だよ」
「それをいうなら待てば海路の日和ありだろ! つーか、使いどころ間違っているし!」
「あははははっ!」
慌てふためく俺のことなど意に介さず。姉ちゃんはどこまでもマイペースだった。途方に暮れる俺の胸を姉ちゃんが指先でとんとんと小突く。
「身体の場所は、本人の魂に聞いちゃおう」
言いたくてたまらない秘密を隠した子供ような瞳をする姉に俺はまごまごと戸惑った。




