約束
「けいちゃん、寂しくなったらまたすぐに逢いにきてね」
「すぐに逢いに来るということは、生き返って速攻で死ねってこと?」
「うんっ!」
元気満点で頷かれても困るのだが……。俺は複雑な表情を浮かべ頭をかいた。
「ん、んーっ、すぐにってわけにはいかないけど、そのうちまた逢いに来るよ。それまで姉ちゃんも元気でいてくれよな」
「待ちすぎて首が落ちちゃうぐらいにずぅっと待ってるね」
姉ちゃんは涙を拭うとふいに俺を抱きしめてきた。
「音羽姉ちゃん……」
両手をわきわきとさせて抱きしめ返すかどうか迷っているうちに、姉は自分から体をそっと離した。そして、右手の小指を差し出した。
「約束っ」
俺は黙ってうなずくと、小指を立てて彼女の指と絡ませた。
「指きり拳万嘘ついたら針千本飲~ます。指切った」
「指きり拳万嘘ついたら針京本飲~ます。指切った」
俺が知っている指きりよりずっと過酷になっている気がしたが野暮な指摘はしなかった。姉ちゃんにはればれとした笑顔が戻った。
「約束破ったら絶対にゆるさないんだからね」
なにげない約束の念押し。俺は背中がぞくりとした。売買契約解除不能の高価なツボを買わされたかのような気分だ。気軽な気持ちで約束なんかしてよかったのだろうかと自問自答する。
ときどき、姉ちゃんに対して言い知れない恐怖を感じるのはなぜだろう。
「閻ちゃんに準備ができたことを話すからちょっと待っててね」
姉ちゃんは制服からケータイを取り出しくるりと背を向けた。
「閻ちゃん、準備できたよ」
「……弟との別れは済んだか」
「やっぱり閻ちゃんは優しいんだね」
「……うつけもの。閻魔が優しくて勤まるわけなかろう」




