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星降る夜に抱きしめて  作者: ひだまりのねこ


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第十三話 ペルセウス座流星群と終わらない日常


「夜空、荷物は全部積んだのか?」

「ええ、バッチリよ流星」


 八月十三日――――今夜は夏の夜空を彩る三大流星群のひとつペルセウス座流星群の極大日、夜中から明け方にかけて毎時三十個程度の流星を眺めることが出来る。夏休み時期ということもあって、非常に人気の天体ショーだ。


 今回の行先は――――星見海岸。周囲を遮るものが無く、今回の流星群は空全体に現れるので、観測するのにうってつけの場所である。


「ふふん、今回は準備も万全だからね」


 前回、星見神社での失敗が余程堪えたのか、夜空はいつにも増してはりきっている。


「……昨日俺がチェックしなかったらヤバかったけどな」

「くっ、それは言わない約束ですよ!!」 


 完璧な彼女だが――――抜けているところがある、それがたまらなく可愛い。流星は思わず夜空を抱きしめてしまう。


「ちょ、ちょっと流星――――今は駄目――――」



「あはは、相変わらずラブラブだね流星」

「ふんす、私も負けられないんだから」

「同意、陽翔私たちもやりますよ」


 両手に花状態の陽翔、そして――――ひよりと澪奈がその両脇を固めている。


「誘った俺が言うことじゃないけど、陽翔たちって星に興味あったっけ?」


 夜空の提案で今回の星見に仲間たちを誘ったのだが、全員参加するとは正直思っていなかった流星。 


「え? 俺は二人とイチャイチャ出来るなら何でも良いし」

「私も同じだよ!!」


 まあ……この二人は想定内だ。天体観測というよりは、キャンプに参加する感覚なのだろう。


「私は元々興味あるというか大好きよ」


 一番意外だったのは澪奈。彼女はひとりで星見に出かけるほどのガチ勢らしい。星座早見盤と赤いセロファンを貼ったライトを当然のように持ってきていることからもそれは明らかだった。


「……やはり澪奈は要警戒……陽翔、いいわね絶対に手放すんじゃないわよ!!」

「ひっ!? わ、わかりました……」


 夜空の圧力にたじろぐ陽翔、最強の彼女は、潜在的な脅威にも警戒を怠らない。


「あれ? そういえば陽介は? 先に来てるって言ってたけど……」

「ああ……陽介なら、向こうで白鳥さんにこき使われ――――いや、手伝いをしているぞ」


 客観的に見て完全に奴隷――――扱いなのだが、本人は嬉々としてやっているので何も言うまい……。



「それでは皆さま、出発しますよ」

「「「「おーっ!!!!」」」」


 今回は、免許を取得したばかりの白鳥さんの運転で現地まで行く。重量の心配が無いので、流星と夜空、そして澪奈もフル装備で参加している。


 しかも頼もしいことに、白鳥さんは天体観測の経験が豊富。


「白鳥さんとはよく一緒に天体観測いきましたよね」

「はい、旦那様は星がお好きな方でしたから」

 

 なるほど……でも――――なんで免許取得したばかりでこんなに運転上手いんですかね? ベテランドライバーの貫禄があるんですけど……まさかずっと無免許で運転してたんじゃないですよね? 白鳥さんならあり得ると思いながら流星は気になっていたことを尋ねる。


「ところで白鳥さん、陽介は?」

「ああ、荷物積み過ぎて全員乗れなくなってしまったので、彼は自転車です」

 

 にっこり天使の微笑みを浮かべる白鳥さんに全員が凍り付く。


「まったく、誰がこんなに荷物持ってきたんだろうね」


 陽翔の言葉に、流星、夜空、澪奈がスッと目を逸らす。



「うおおおおおお!!!! 待っていてくださいね白鳥さん!! 今行きますから!!」


 その瞳に映るのはメイド姿の天使、陽介は全力でペダルを踏みこむ――――当の本人は、ノリノリであった。



「おお……夜の海辺って雰囲気あるなあ……」

「ロマンチックです」

「結構人多いんだね」


 流星たちは、早速場所を決めて設営を開始する。見頃は夜明け頃になるのでかなりの長期戦、いかに快適に過ごせるかが大事なのだ。レジャーシートの上に緩衝材を敷き詰め、リクライニングチェアやテントを設置する。夜中は冷えるので、寝袋や防寒対策、虫よけもバッチリ考えられている。


「へえ……なんか星見ってキャンプみたいで楽しいね」

「うん、なんかワクワクしてきた」


 陽翔とひよりはのんきなものだが――――


「おおっ……!! これがUnistellar Equinox 2 スマート望遠鏡……めちゃめちゃスタイリッシュでカッコイイですね……。ね、ねえ夜空、頬ずりしても良いですか?」


 澪奈は夜空の天体望遠鏡にめちゃめちゃ食い付いていた。


「……なんか既視感が」

「あ、あはは……」


 ドン引きする夜空とスッと視線を逸らす流星であった。



「夜空……俺さ、幸せ過ぎて怖いんだ。いつか夜空の心が離れてしまうことが――――」


 どんなに隠しても、取り繕っても流星は気付いてしまう。本人が自覚していない段階で誰よりも早く。 今が幸せであるから――――だからこそ余計に失うことが怖くなる。


「はあ……流星ったらいまだに私のこと全然わかってないのね……。いいかしら、恋はいつか冷めるけれど、愛は永遠なのよ――――あの星々と同じように変わらずここにあるの」


 少し不満そうに――――そして愛しくてたまらないというように夜空は流星の両頬を思い切りつねる。


「それよりも――――流星は自分の心配をした方が良いんじゃないの? 流星が離れたいと言っても絶対に逃がしませんからね!!」


 かわいい夜空の迫力だけで――――流星の不安など消し飛んでしまった。


 それでも――――もしまた不安になった時は――――


「夜空、また一緒に星を見に行こう」

「ええ、当然でしょ」


 何度でも繰り返せばいい。


 いつでも思い出せばいい。


 あの夏の――――星降る夜の――――冷めやらぬ熱を。


 奇跡のような出会いと――――想いが重なり合う――――満天の星空のような輝きを――――




「はあ……はあ……やっと着いた……」


 流星たちに遅れること三時間、陽介はようやく星見海岸へと到着した。


「待ってましたよ陽介さま」

「し、白鳥さん!! 俺のことを待って――――」

「はい、陽介さまの持ってきた荷物を」

「ぐはっ!?」


 陽介にとってはこの反応はご褒美でしかないが、それでも少しだけ寂しいものだ。


「ふふ、ですが、陽介さまを待っていたというのは本当ですよ」

「し、白鳥さんっ!!」

「皆さまのドリンクを買ってきて欲しいので」

「ぐはっ……!?」


 今度こそ崩れ落ちる陽介。


「俺、今着いたばかりで……少し休憩を――――」

「それは残念ですね、せっかく二人きりで買い出しに行けると思いましたのに」


 え――――?


「それではゆっくり休憩なさってください。では――――」

「うわあああ、白鳥さああああああん!! 行きます!! 行かせてください、俺――――白鳥さんと――――二人きりで――――買い出し行きたいです!!」


 無表情な仮面がすこしだけ緩む。


「……仕方ないですね、そこまで仰るのなら――――参りましょうか、陽介さま」

 



「夜空、準備出来たか?」

「ええ、流星の制服姿――――素敵ですよ」

「お前の制服姿は――――可愛すぎる」

「ふふ、これ全部流星のものですから安心してください」


「……お二人とも、朝からイチャイチャしすぎるのはさすがにどうかと」

「……白鳥さんがまともなことを言ったぞ……夜空、折りたたみ傘入れとけ」

「流星さま……カバンの中いっぱいに避妊具詰めておきましょうか?」

「ふふふ、流星ったら」


 今日から新学期、夜空が転入してくる日でもある。 

  

 きっと学校中が大騒ぎになるだろう。


 でも大丈夫。流星と夜空の繋がりは夏の大三角のように変わらない。季節を超えて――――時を超えても変わらず輝き続ける。


 仲間たちとは天体観測部を作ることを決めたし、高校生活はまだ始まったばかりだ。


 え? 白鳥さんと陽介はどうなったのかって?


 白鳥さんは大学に通いながらメイドを続けている、陽介は同じ大学に行くために今から猛勉強しているらしい。関係は――――正直よくわからない。



「流星、考えこんじゃってどうしたの?」

「いや、ちょっと白鳥さんと陽介のことを――――な」

「……朝から何てこと考えてるのよ、ほら、私を見なさい、私のことで頭をいっぱいにして脳内を浄化するのよ!!」


「いや……流星たちだって似たようなものでしょ?」

「陽翔、それブーメランだから!!」

「手遅れよ、ひより、すでに深々と突き刺さっているもの」



 彼らの日常は終わらない。

最後までご愛読、ありがとうございました。今回は夏が舞台でしたが、機会があればまた続きを書きたいなって思っています。評価や感想、ブクマなど、どんなリアクションでもめちゃめちゃ励みになります(≧▽≦)

 

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― 新着の感想 ―
楽しく、そして懐かしさを感じながら読ませていただきました。 私自身も星空が好きで、学生時代は地学部(当時はその名前でした) 入っていました。 ちなみに、私が一番好きなのはプレアデスです。 素敵な作品…
∀・)素敵なドラマ作品でした。なんだろうね「逃げ恥」を観て楽しんでいた時のことを何か思いだした感じ。主人公の流星くんもですけど、登場キャラクターの一人一人がなんかこう、愛おしかった。アナタのお人柄なん…
良かった。 すごく良かった。 優しい世界でみんな頑張ってて、一生懸命で不器用で、でもちゃんと助けがあって、助け合ってて、すごく良かった。 絵も小説も、作者の人柄や生き方が見える事があるけれど、まさに…
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