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ムーンウォーク
【魚の目】はゆっくりと顔を上げた。「そうだ!上ってみよう」暗くねじれた階段を見つめながら決意が固まる。過去も未来も絡み合うこの場所で、ただ立ち止まるわけにはいかない。どんなに不確かな世界でも、歩みを止めずに上へ上へと進むしかないのだ。足元の段差は冷たく硬いが、彼の心は熱く燃えていた。迷いも恐れも蹴散らし、彼は一歩を踏み出した。あへっ。なんて言っている場合ではない。これまで、ありていたが、上るべきだった。それはわかっていたが、階段がうねっていた。しかし、【段原】をわからせたために、あの会議でやり込めたために、【魚の目】を上らせる以外なかった。