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古城の暗影  作者: 牧亜弓
階段
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無限階段

【魚の目】はまた歩いていた足元には階段下りても下りても終わらない上り階段をひんやりとした段差靴底に伝わる石の感触は本物だったがもう数百段以上を数えてなお先が見えない背後を振り返ると真っ暗だった何段降りてきたのか確認する術もなかった降りるたびに空気は重くなる視界が鈍くなっていくそれでも一歩また一歩足を運ぶしかなかったそのうち上り階段の壁に文字が刻まれていることに気づくはじめはかすかな線だったがだんだんとそれははっきりと文になった書いてあるのは懺悔だった私は妹の小鳥を逃した私は人の金を盗んだ私は見て見ぬふりをした私は嘘をついた階段を下りるたびに告白の濃度が増すそれは他人のものではなかった【魚の目】自身の記憶だった気づかないうちにこの階段は彼の内面へと潜っている罪の堆積が彼を押し下げていく「やれやれ」と彼はつぶやくこれが俺の構造か積層する自己の層まるで地層が剥き出しになってるみたいだなそして階段の踊り場に立つそこにだけ一枚の鏡があっただがそこに映っているのは顔ではなく階段だった永遠に続く階段を登っていく【魚の目】の姿だった「逆だ」彼は言ったここまでずっと下りてきたが本当は登っていたのかもしれない階段の意味は高さではなく深さだったその瞬間足元の石が透明になったそこにいたのはかつての仲間たち【焼け犬】【牧亜弓】【ねじれ女】【ふじわらしのぶ】それぞれが天に昇っていく姿だ上っても上っても無限に降りている薄くなってゆく彼らの影笑っていたり怒っていたり何も言わなかったり【魚の目】は目を細めてそれを見ていた最後まで残された者だけが見るこの景色を彼は一段だけ上がってみる感触は何も変わらなかっただが頭の中の靄が少しだけ晴れた気がしただから更に上ってみると降りてゆく感じがする上りたいのに降りているまるでアセンション終わらない階段という名の旅はまだ続いているが今ようやくその意味を問いはじめることができた彼はまた一段踏み出すもちろん上へと

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