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古城の暗影  作者: 牧亜弓
地下室
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ふじわらしのぶ、さらに語る

【ふじわらしのぶ】は静かな地下室の薄暗がりの中で、ゆっくりと口を開いた。「私たちが生きているこの世界は、表層の現実だけじゃない。見えない糸が張り巡らされていて、それが複雑に絡み合っている。どんなに単純に見える物語も、その裏には多層的な真実が潜んでいるの」彼女の声はかすかに震えていたが、揺るがぬ確信がそこにあった。「人はしばしば善と悪、光と闇で世界を分けてしまうけど、実際にはそう簡単なものじゃない。真実はねじれ、変化し、いつも混沌と秩序の狭間にある」彼女は深く息を吸い込み、言葉を続けた。「だから、私たちが追い求めるべきものは、表面的な戦いの勝敗じゃなくて、その奥に隠れた謎や裏切り、そして存在そのものの本質に近づくことにあると思うの」【ねじれ女】はその言葉を聞きながら、唇の端を微かに上げてにやりと笑った。「その通りね。ねじれこそが真実の本質だと思う。真実なんてまっすぐで綺麗なものじゃない。歪み、ねじれ、絡まり合ってこそ真実なの。だから、単純な正解なんてないのよ」彼女の目は深い闇のように静かで、そこに揺らめく光が何かを暗示しているようだった。【牧亜弓】は静かに目を細めながら話を引き継いだ。「昔の物語にだってそんな複雑な構造はあった。例えば俺が考えているのは、AとBの対立に見えて、実はCが全ての根源に絡んでいるパターンだ。単なる二者間の戦いじゃなくて、Cという第三の存在が物語の全てを操っている。だから勝者も敗者も、その真の意味ではただの駒に過ぎない」彼は一瞬間をおいて続ける。「そこに四つの勢力が争う話が加われば、なおさら複雑になる。スペースコブラの記憶は曖昧だけど、確か四つの勢力が激しく対立して、どう決着をつけるのかが焦点だったはずだ」彼の声には少し熱が込もっていた。「四つの勢力が絡み合うなら、単純な勝ち負けはない。どう動いても、どこかでバランスが崩れて、新しい混乱を生む。それが面白いんだ」【魚の目】は視線を遠くの壁に落としながら静かに呟いた。「物語の終わりは決して本当の終わりじゃない。終わりは始まりの別名だ。混沌の中にある秩序、秩序の中に潜む混沌。その境目は常に揺らいでいる。僕たちはそこにいる。物語の中で変わり続ける存在として」彼の声は地下室の静寂に溶け込み、響き渡った。その時、【焼け犬】が拳を握り締め、低く唸った。「おいおい、そんな哲学的な話ばかりじゃやってられねぇぜ。俺たちはこの迷路みてえな世界からどうやって抜け出すんだ?話が複雑になっても、結局は行動が必要なんだろ?」彼の言葉は鋭く、現実的な焦燥感を宿していた。「確かに真実やねじれは大事かもしれねぇけど、立ち止まって考えてる時間はねぇ。俺たちが動かなきゃ、何も変わらねぇんだ」地下室の空気は一層重くなり、緊張感がみなぎっていた。言葉が次第に途切れ途切れになり、静寂が支配する中で、物語の深淵は彼らを飲み込もうとしていた。彼らはまだ見ぬ真実の縁に立っていた。だがその真実とは何か?そしてこの迷宮の出口はどこにあるのか?


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